敗戦も気を吐いた。日体大ハラトア・ヴァイレアの壁を破る決意。
文字通り、大車輪の活躍だった。
10月9日、東京・江戸川区陸上競技場。日体大ラグビー部4年のハラトア・ヴァイレアは、明大に10-46と敗れるも鮮烈な印象を残す。
前半10分、50メートル超のペナルティゴールを決める。先制する。
さらに直後のキックオフでは、球の落下地点へ高く飛び上がって相手に競り勝ち捕球。着地するやタックラーを1人、2人とかわし、さらに防御をひきつけてオフロードパスを放つ。
守っては相手の接点に果敢に絡む。時折、判定に泣きながらも、要所ではターンオーバーに成功する。例えば後半13分。自軍キックオフの弾道を追い、落下地点へ到達。腰を落とし、相手が捕った球をとらえる。強靭な背中と上腕で引き抜く。
結局、加盟する関東大学対抗戦Aで開幕3連敗という結果に終わる。ただし湯淺直孝ヘッドコーチは、「やってきたことがゲームに出た」。14日前に早大に0-96と屈したのを受け、防御の出足を見直していた。試合でその成果が出たと語った。
昨季の成績は明大が首位だったのに対して日体大は6位。奮闘したチャレンジャーたちにあって、特に気を吐いたのがヴァイレアだった。
身長184センチ、体重100キロと恵まれた体格。パワー、スピード、スキルとさまざまな長所を誇る。過去2戦はキック力が買われて最後尾のFBを務めてきたが、明大戦では攻守で最前線に立つNO8へ入った。ジュニア・ジャパンをはじめとした年代別代表でも、このように複数の位置をこなす。
今度の起用に関し、湯淺ヘッドコーチはこう解説する。
「前に出るディフェンス、相手のボール(接点からの攻撃のテンポ)をスローにするのが(チームの)テーマでした。彼(ヴァイレア)の強さ、ディフェンスの堅さを最大限発揮できるのはNO8じゃないか、という思いで起用しました。その部分は彼も納得、理解して、パフォーマンスを出してくれたと思います」
GPSアテレ、トンガカレッジを経て16歳で来日。千葉の日体大柏高を経て内部進学し、卒業を間近に控える。2022年1月からのジャパンラグビーリーグワンでは、4月以降のデビューを目指せそうだ。
そういえば、チームの中心選手としてマークされる心境をこう述べたことがある。
「もともとラグビーは痛いスポーツだから、ウェイト、練習を頑張って試合で出し切るしかない」
目の前の壁を自力で破る決意を、簡潔な日本語で明かすのだ。24日には、東京・帝京大百草グラウンドで帝京大とぶつかる。