【ラグリパWest】40、100、100。常翔学園 [大阪府]
野上は監督として58勝。荒川は40勝。合わせて98は歴代3位の記録である。秋田工の134、天理の105に続く。39の大会出場数は歴代10位。最多は秋田工の68だ。
優勝5回は歴代5位。東海大大阪仰星、國學院久我山、目黒学院と並ぶ。最後の頂点は92回大会(2012年度)。今夏の東京オリンピックに主将として出場した松井千士(ちひと、=キヤノン)を擁し、決勝戦で御所実を17−14で退けた。野上がひとりで達成した記録でもある。荒川は20年前、食道がんのため世を去っている。視力を保護するためのサングラスがトレードマークだった。
「荒川先生の口ぐせは、『無理するな』やった。その方針は続いている」
勝利にのみにこだわり、猛練習を課すことはいとわれた。ケガを誘発し、ラグビーを嫌いになる。その言葉が野上の中で今も生きる。型にはめない指導もその一環である。
常翔学園の定年は64歳。来年は最後だ。
「それからどうしようかなあ、と考えている。誘った子もいるから、その進路には責任を持ちたい気持ちはある。まあ、監督が決まったら、そのご意向に従うよ」
部長になった荒川もそうだった。監督に昇格した時、お伺いをたてに行った。
「おまえが監督や。おまえが決めろ」
そう、言われた。
常翔学園のグラウンドは校舎の北側、淀川の河川敷にある。国交省の管轄で手を入れられないため、土のままで使っている。その分、内庭(ないてい)を昨年11月、人工芝化した。野上は満足感を漂わせる。
「正規のグラウンドの5分の1くらいの広さやけど、めっちゃいい」
コンタクト練習などが苦もなくできる。
さらに内庭の東側、部室のあった建物は取り壊され、新グラウンドの建設が始まっている。フルサイズの人工芝。淀川の真横で地盤が軟弱のため、基礎工事に時間はかかるが、4年後の2025年には完成する。
その時まで、出場数や白星をどれだけ積み上げているのか。全国大会予選は10月24日が初戦になる。3つ勝てば花園に届く。
このチームの公式戦黒星は2つ。どちらも大阪桐蔭につけられた。22回目の選抜大会は8強戦で22−33、春の大阪府総体は18−42だった。野上は振り返る。
「じっくり構えられたら、ボロが出た」
選抜につながる近畿大会では決勝で34−17と勝っている。府予選はお互い3校のAシードのため、大阪桐蔭と地区は異なる。雪辱戦があるとすれば全国大会になる。
「悩んだ時はふっと荒川先生のことが思い浮かぶ。先生ならどうしはったやろう、って」
恩師の記憶とともにあるチーム作り。野上は強豪の名をさらに磨き上げ、次の世代につなげていく。