コラム 2021.10.05
【ラグリパWest】強豪への道すがら。大阪電気通信大学高校

【ラグリパWest】強豪への道すがら。大阪電気通信大学高校

[ 鎮 勝也 ]



 その前の72回目の近畿大会予選(新人戦)はBブロックで2つ勝つ。都島工と汎愛(はんあい)の合同Dには24−10、北野を67−19で降した。準決勝では冬の全国優勝5回を誇る常翔学園には0−148と大敗する。

「目が覚めました。1個か2個、何かできるかな、と思ったけど、何もできませんでした」
 農端は肩を落とすが、2勝の戦績が示すように、普通の相手なら負けなくなってきている。これからの課題は、トップチームとの差をいかに詰めていくかである。

 農端は34歳。小学校の6年間、堺ラグビースクールに籍を置いた。父は登美丘(とみおか)でラグビーを経験する。今、この高校はダンスで名を馳せる。農端は高校で競技を再開。初芝(現・初芝立命館)から関西Bリーグの甲南大でプレーを続ける。ポジションはスクラムハーフだった。

 教員になったのは叔父の影響もある。体つきは同じ。どちらかと言えば短躯(たんく)だが、がっしりしている。
「農端家のDNAです」
 笑顔が広がる。

「おじさんは中学生勧誘など色々なことを丁寧に教えてくれました」
 特定の中学と信頼関係を築け、むちゃくちゃ行くな、と言われた。その教えを守る。関係の深いのは中宮(なかみや)。この中学は今年、日本一の呼び声が高い

 勧誘のひとつの長所は、「デンダイ」と呼ばれる大学つきの提案ができることだ。
「7年でどうですか、と話ができます」
 入学を希望すればほぼ100パーセント通る。入学金免除などの利点もある。

 高校は工学科と普通科の2科制。今風のロボットやデジタルゲームを開発する工学系のみならず文系も設置して、生徒をすくうようにしている。スポーツ推薦の合否は国英数理社の5教科と体育を合わせて勘案される。

「課題を持った子は指導します。今まで勉強だけでドロップアウトした子はいません。それもウリです。グランドもない、戦績もない、そこだけで部員とは関係を作っています」
 農端は力を込める。

 主将でスタンドオフの鎌田龍也(かまだ・りゅうや)は笑顔を浮かべる。
「毎日、楽しいです。練習の雰囲気はいいし、友達も増えました」
 鎌田ら3年生13人にとって最後になる101回目の全国大会予選の1回戦は10月10日。相手は叔父の淀川工科に決まった。

 参加44チームが3地区に分かれる中、同じ第1地区、そして初戦で対戦する。
「縁やなあ、って思います。ここまで強くなったのはヨドコーのお蔭。やっつけて、おじさんに恩返ししたいと思っています」
 叔父は今年還暦を迎え、定年退職となる。その後は最大5年の再任用を希望する予定だが、この大会はひとつの節目になる。

 甥の成長か、叔父の威厳か。万感の思いがこもる戦端はまもなく開かれる。

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