国内 2021.09.10

明大は戦力充実。慶大は急ピッチで再建。対抗戦開幕まもなく。

[ 向 風見也 ]
明大は戦力充実。慶大は急ピッチで再建。対抗戦開幕まもなく。
9月4日に練習試合をおこなった慶大(赤)と明大(撮影:向 風見也)


 昨季の大学ラグビーシーンでの全国上位4傑のうち3校が集まる関東大学対抗戦Aは、9月12日に開幕する。

 各校が最終調整をおこなうなか、前年度4強の明大と同8強の慶大が4日に練習試合を実施。通常の試合より計20分少ない「30分×2本」の変則マッチは、明大が40-21で制し、選手層の厚さを示した。

 時折、雨音が強くなった東京・明大八幡山グラウンドにあって、勝者は多くのメンバーを起用した。SHの飯沼蓮主将、夏合宿で好ランを重ねた4年生WTBの松本純弥、タフな右PRで3年の大賀宗志ら、一部の主力候補はベンチ外。先発した15名も、ハーフタイムまでにがらりと入れ替わった。今年6月就任の神鳥裕之監督はこうだ。

「30分2本という限定した試合時間だったので、(改めて)見たい選手を起用しました」

 個々が際立った。

 スクラム最前列のHOの位置では、前半に出た2年の松下潤一郎が敵陣深い位置でのジャッカルで得点機を創出。そのまま味方のトライを生んだ。後半からその位置に入った3年の紀伊遼平も、防御ラインへ鋭角に切れ込むような突進でスコアを奪う。4年生でこの日欠場した田森海音との定位置争いを、激化させた格好だ。

 FLでは、春先からブレイクした1年生の福田大晟が先発して早々に故障退場。ただし後半から入った4年生の吉田幹が、タッチライン際でボールを持っての粘り腰、力強いジャッカルで気を吐いた。後半に投入されたFWでは他に、2年生LOの松本光貴がスピードとフットワークを活かして防御網をかいくぐる技術で光った。

 BK陣では、レギュラー候補と見られる前半組が光った。

 東京オリンピックに出場した3年生WTBの石田吉平は、19-7で迎えた前半終了間際にハーフ線付近右で効果的なジャッカルを繰り出した。2年生CTBの廣瀬雄也は、スクラムからの1次攻撃で放ったキックでデッドボールラインを越してしまうこともあったが、連続攻撃中にはためを作りながらスペースへパスを放つなど、総じて技術力を証明。2年生SOの伊藤耕太郎は、相手防御網に接近しながら外側のスペースに鋭くパスを放つ。

 後半に出番を得たBK陣では、2年生WTBの西川賢哉が長距離を走り切ってのトライを決め、1年生FBの金昂平が小気味よいフットワークと自陣ゴール前でのカバー防御で魅した。

 かたや慶大は、主力と目されるメンバーに多くの出場時間を与えて上位陣の力量を体感した。

 FBから転身した2年生SHの山田響は、鋭いラン、自陣ゴールライン上での防御で独自色を打ち出した。特に、味方がカウンターラックを決めた直後のサイドアタックは、インパクトがあった。SOからFBへ回った3年生の中楠一期は、タッチライン際への柔らかいキックパスで好機を探った。

 今回のマッチメイクは今年3月までに決まっており、試合時間などは現況を踏まえて調整されたようだ。出番のなかった慶大の控え選手は、そのままグラウンドを借りて居残り練習を実施した。

 敗れた栗原徹監督は「こちらも40分×3本くらいでお願いしたかったですが、短くてもやっていただけるのならいい勉強になると思いました」とし、こう語った。

「(全国の)トップ4レベルに届いていないことが体感できた。磨くべきことが徐々に明らかになっています。(着手すべき点は)FWのスクラムに時間をかけるのはもちろん、ブレイクダウン(接点)ですね」

 明大は12日、八幡山で青学大との初戦に挑む。慶大のオープニングゲームは18日で、神奈川・秋葉台公園球技場での日体大戦となる。

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