真価を問われる重要な一戦。ジャパンが敵地で世界ランク4位のアイルランドに挑む。【日本代表戦、B&Iライオンズツアー J SPORTSで全試合配信】
ライオンズ戦で印象残したインパクトプレーヤーたち。この試合の結果が今後の強化を左右する
ライオンズ戦を振り返ると、前半はコリジョンの部分で相手の圧力を受け思うようにアタックを仕掛けることができなかったが、後半はフレッシュな選手を次々と投入して攻撃の流れを引き寄せ、自分たちの形で攻め込むシーンを数多く作った。とりわけ鮮烈なインパクトを残したのが、今季のスーパーラグビーで新人賞に選出されたハイランダーズ所属の姫野和樹だ。6月19日のスーパーラグビー トランス・タスマンの決勝後、ただちにニュージーランドを経って21日に合流するという強行軍だったが、50分にキャプテンのFLリーチ マイケルに代わってピッチに登場するや、自慢のパワフルなボールキャリーでディフェンスブレイクを連発。59分にはラインアウトからのサインプレーでタックラーを弾いてトライも挙げるなど、存分に強みを発揮してチームに勢いをもたらした。体調、コンビネーションいずれも良化が期待できるアイルランド戦では、さらに多くの見せ場を作ってくれるだろう。
歴史的一戦で記念すべき初キャップを獲得した23歳のSH齋藤直人も、サンウルブズ戦に続いて強い輝きを放った。ラックができた瞬間にボールアウトするような高速の球さばきはこれぞ日本ラグビーの真骨頂というべき躍動感をたたえており、初めてのテストマッチ、それもライオンズを相手に堂々と自分らしさを出せる度胸のよさも頼もしい。過去2戦は後半からの登場でテンポを上げる役割を担ったが、スタメンに起用して序盤からフルスロットルで振り回す展開に持ち込むのもおもしろそうだ。
初代表組でただひとり先発に起用されたWTBシオサイア・フィフィタ、2016年以来5年ぶりの代表返り咲きで途中出場を果たしたNO8テビタ・タタフも、持ち前の推進力を生かした突進で実力をアピールした。ともにジェイミー・ジョセフヘッドコーチ体制のジャパンで活動するのは今回が初めてで、周囲との連携が成熟していくのはまだこれから。トレーニングやゲームの経験を重ね、名参謀のトニー・ブラウンアシスタントコーチが描く多彩なチーム戦術にフィットすれば、さらなる上昇も十分見込める。
2019年の対戦はジャパンのホームゲームで、日本特有の蒸し暑さが残る中での戦いというアドバンテージもあった。一方今回は、敵地での過ごしやすい気候下の試合となる。アイルランドは今週に入り主将のLOライアンが内転筋のケガを抱えていることが明らかになり、ジャパン戦の出場は微妙な状況だが、ホームの地で、同じ相手に2度続けて負けられないという思いは強いはず。そうした要素を跳ねのけて勝利を挙げることができれば、いよいよジャパンは文句なしのティア1国として世界から遇される存在になるだろう。
コロナ禍によりおよそ20か月も実戦から遠ざかったブランクを埋めるためには、ここから2023年ワールドカップまでの2年間で強豪国との対戦を数多く組むことが重要になる。テストマッチで戦う力を高めるには、テストマッチの経験を重ねていくしかない。そして目の前のテストマッチの結果と内容が、その先のマッチメイクの道筋を左右する。2015年と2019年のワールドカップでの躍進は、ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ戦というこれ以上ない機会をもたらしてくれた。この絶好の流れをより大きく強くしていく上で、今回のアイルランド戦はジャパンにとって非常に重い意味を持つテストマッチといえる。
チームはライオンズ戦翌日の27日にスコットランドを出発し、ダブリンへ移動。28日月曜日よりアイルランド戦に向け本格的なトレーニングを開始した。ヨーロッパ到着から2週間が経ち、今回は時差のない短距離移動ということもあって、前週以上にいいコンディションで試合に臨めるはずだ。最大限のパフォーマンスを発揮し、すばらしい結果でツアーを締めくくってくれることを期待したい。
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