日本代表 2021.06.24

「スモウ」の土俵に新たなオージー。日本代表ジャック・コーネルセンの決意。

[ 向 風見也 ]
「スモウ」の土俵に新たなオージー。日本代表ジャック・コーネルセンの決意。
日本代表ニューフェイスのジャック・コーネルセン。6月12日のサンウルブズ戦に出場(撮影:松本かおり)


 天然芝の土俵に立てるか。

 パナソニックのジャック・コーネルセンが、5月下旬に始まったラグビー日本代表のツアーで存在感を発揮。6月26日、エディンバラ(スコットランド)マレーフィールドでのブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ戦で日本代表デビューを狙う。その口ぶりには、聡明さがにじむ。

「(戦術の)理解度を上げたい。チームがアタック、ディフェンスでどんなことをして欲しいかを理解することで、(初めて)そのプレーができるようになる」

 日本代表は、個々の役割を明確化。攻撃中は芝に立つ15名が立ち位置、役回りにより「スモウ」「ニンジャ」「サムライ」のいずれかのパートに配属される。そして今度の試合では、「スモウ」の働きが見どころとなりそうだ。

 グラウンドの中盤で複数名ひと組のユニットを作り、細かいパスを織り交ぜながら防御の壁へ突っ込む。それが「スモウ」の役目だ。おもに最前列のPR、空中戦で戦うLOの選手がその持ち場を担い、突進力が問われる。

 かたやブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズはイングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランドといった欧州の強豪4チームからメンバーを選抜。肉弾戦の得意な巨躯を揃える。

 そのため今度の「スモウ」のメンバーは、世界屈指の分厚い壁にどこまで風穴を開けられるかで注目される。首尾よく前に出たり、低い姿勢での突進で相手のハイタックルなどの反則を誘えたりしたら、スペースを攻略する「ニンジャ」「サムライ」はより有機的に動けるだろう。

 今回、全ての起点となる「スモウ」候補の1人が、勤勉なコーネルセンなのだ。

「フィジカリティをしっかり出して、グラウンドの真ん中のエリアで仕事をすることを期待していただいていると思います。フィジカリティ、ワークレートという強みを出してやっていきたい」

 身長195センチ、体重110キロの26歳。オーストラリア出身で、母国の代表選手だったグレッグさんを父に持つ。

 練習生として2017年に加入したパナソニックでは、スクラムの後列にあたるFL、NO8を担う。ただし日本代表に入ると、すぐにLOへの転向を言い渡された。

 確かにパナソニックでも接点周辺での防御、相手のモール(立ったボール保持者を軸にした塊)を割る身体の使い方で存在感を発揮していた。普遍的に下働きの問われるLOにも、適性がありそうだった。

 かくして攻撃システム上、おのずと「スモウ」を担うわけだ。

「日本に来る前は自分が日本でどうなっていくか、そこまで具体的には見えませんでした。ただ、長く日本にいるほど自然と日本代表になりたいと思うようになりました。ベストを尽くし、チームのために自分のできることであれば、どのポジションでもやろう。そう思い、チャレンジしています」

 実戦でアピールしたのは6月12日。静岡・エコパスタジアムでのサンウルブズとの強化試合に、「JAPAN XV」名義の代表チーム側で後半0分から出た。

 「スモウ」の位置での突進と同時に、防御でも光った。相手を掴み上げるチョークタックル、低いタックルで走者を倒した直後の素早い起き上がり…。

 攻撃で「スモウ」に入ることの多い日本代表のLOは、守りでの貢献も問われる。

 日本代表のきょうだいチームだったサンウルブズでは、技巧派の海外出身LOが代表選考レースから遠ざかったことがある。当該選手の1試合あたりのタックル本数が少なかった日があり、それを指揮官のジェイミー・ジョセフが重く見たためだ。

 かたやコーネルセンは、泥臭い働きで首脳陣のニーズに応えたか。このゲームを前に言った。

「自分は自分の役割を全うする。行動することで周りに影響を与える。そのスタンスで過ごしています」

 ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズでは先発LOの一角に、アラン・ウィン・ジョーンズが起用される。

 ウェールズ代表148キャップ(代表戦出場数)を誇る身長198センチ、体重122キロの35歳は、モール、空中戦のラインアウトと、LOにとっての見せ場で存在感を示すだろう。

 もしコーネルセンが試合に出るとしたら、国際舞台での初陣からいきなり最上級の圧と対峙するのだ。裏を返せば、判官びいきのファンの期待値を高めるばかり。新たな名脇役が、静かにふんどしを締める。

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