コラム 2021.06.14
【ラグリパWest】新施設で一層の飛躍を。 摂南大学

【ラグリパWest】新施設で一層の飛躍を。 摂南大学

[ 鎮 勝也 ]



 摂南には、その栄養、量、味、そして安価で知られる「摂南飯」がある。腕をふるう中心は管理栄養士の古野幸子。その食事がコロナによって、昨春から中断している。

 摂南にはラグビー部の専用寮がない。「自宅から通える」ということが誘い文句のひとつではあるが、外国人留学生や地方出身の部員からすれば、現状では食事の負担は大きい。一方、京産大には寮があり、摂南飯を参考にした寮食が出る。野上が見抜いた体格差はトレーニングのみではない。食事も睡眠と並び、大切な要素である。

 ただ、試合では光明もあった。後半は22−12と上回る。後半34分、WTB藤井延卓(のぶたか)のトライは、2人の外国人留学生の突破が軸。ともに4年生になったCTBテビタ・タイとFBヴィリアミ・ツイドラキはボールさえ持てば、見せ場を作れる。

 瀬川は振り返る。
「互角に戦えた時間はありました」
 その時間帯を長くするためにも、東芝や7人制日本代表での監督経験を生かしたい。トップリーグ連覇は2008年から、リオ五輪の4位入賞は2016年だった。

 目標は定まっている。
「選手権に行きたいです」
 摂南の大学選手権出場は2回のみ。16校制だった2008年度の45回と46回大会に連続で出る。45回は最高位となる8強進出。帝京大に7−55だった。12大会ぶりの出場を確実にするには、関西リーグの上3つに入る力が必要だ。この春は、天理大、同大、そしてこの日の相手の京産大の評価が高い。摂南の直近5年の成績は昨年の6位から順に7、B、8、7となる。

 目標達成のため、瀬川はラグビーに専念する。家族は東京に置き、大阪に単身赴任。昨年、環境の変化でふっくらした顔も、大学への行き帰りを歩くなどして元に戻した。自分を律する大切さを無言で部員に伝える。

 摂南大のジャージーは濃紺など青系3色。フレンチ・バーバリアンズを模している。今から36年前の10月23日、河瀬は日本代表としてこのチームと対戦する。

 そのトイメンはジャン・ピエール・リーヴ。フランスの顔である金髪FLの引退試合だった。日本代表は4−45(当時トライは4点)と敗れたが、国際試合時に召集されるチームの強さや人気を現地で目の当たりにする。

 翌1986年、摂南大に監督として呼ばれる。荒川博司の尽力があった。荒川は河瀬を高校入学時にラグビーに誘い、常翔学園の歴代5位となる全国大会優勝5回の礎を築いた。河瀬の研究室には2人の恩人の遺影が並ぶ。荒川と明治大時代の監督・北島忠治である。

 河瀬の着任と同時に摂南大は強化を開始。ジャージーは思い出ある青に定める。創部から10年を経ていた。

 今、グラウンドの指導は、還暦を2つ越える河瀬から瀬川にゆだねられた。整った施設を追い風に、この由緒と歴史あるジャージーとともに、本家同様、世を席巻したい。

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