コラム 2021.03.11
【コラム】「我慢し続けるな」

【コラム】「我慢し続けるな」

[ 野村周平 ]

 しばらくして、自宅で食事をしている時、いきなり動悸が激しくなった。「首をわしづかみにされたような症状になった」。うまく呼吸ができない。汗が噴き出る。一人で立ちあがることができず、妻の運転する車で病院に行った。

 脳や心臓に問題はない。そう診断された。その後、胃カメラを入れたり、髄液を調べたり、あらゆる検査をした。当時、精神的な病気に関する知識はなかった。最後に医者から「精神科に行ってみてください」と言われてもピンとこなかった。

 パニック障害と診断された時は、少し安心した。「メンタルの部分とはみじんも思っていなかったから。原因が分かったのがよかった」

 それでも、その1か月は「人生で一番しんどい時だった」と振り返る。動悸は止まらず、不安感から冷や汗をかきっぱなしだった。食事した時に倒れたからか、ご飯を食べることができなかった。栄養摂取はプリンとゼリーだけで、合間に点滴を受けていた。体重は10キロほど減った。家では、ほぼ布団をかぶっていた。

 そんな状態でも、練習は続けていた。当時の平尾誠二GMに「治療に専念しろ」と言われたが、「ほかの選手に病気のことを言わないでほしい」と頼んだことだけは覚えている。

「やせていく姿は気付かれていたと思うけど、チームに迷惑をかけたくなかった。弱みは見せるものじゃないと思っていた。心配されるのもいやだった」。日々を乗り切るのに、必死だった。

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