国内 2021.02.25
TLデビュー 無名から先発へ、クボタFB金秀隆。大学途中で針路変更、神戸製鋼SO李承信。

TLデビュー 無名から先発へ、クボタFB金秀隆。大学途中で針路変更、神戸製鋼SO李承信。

[ 見明亨徳 ]
強豪の神戸製鋼に加入し、トップリーグ2021開幕戦でデビューした李承信(撮影:毛受亮介)

 昨年9月、神戸製鋼コベルコスティーラーズに電撃入団が発表されたのは李承信(り・すんしん)だ。1月に20歳になったばかりのSO。李は大阪朝鮮高から帝京大に進学し、高校日本代表、ジュニア・ジャパンにも選ばれるなど順調な歩みを見せていた。だが、2年生になった昨年、その名前が消えていた。ニュージーランド留学を希望もコロナ禍で果たせず。出身地の強豪、神戸製鋼の練習に参加し、針路を決めた。

 神戸製鋼のSO陣には、昨季まで元ニュージーランド代表のダン・カーターがいた。今季は同じく黒衣を着たアーロン・クルーデンが加わった。サンウルブズでスーパーブーツを発揮したヘイデン・パーカーもいる。李は世界レベルでのチーム内競争に自らを置いた。

 そして2月20日の対NECグリーンロケッツ戦。神戸製鋼は47-38で接戦を制した。
 10番はパーカーが先発、李は22番リザーブでベンチへ。ピッチへは42-26と試合が決まった後半34分に出場。試合の最後をきちんと締める役割を任された形だ。

 出場後すぐにNO8ナエアタ ルイが左隅にトライを奪い47-26へ。李はコンバージョンを任されたが、外れ、初得点ならず。リスタート前、SHに大阪朝鮮高の先輩である梁正秋(りゃん・じょんちゅ)が入り、トップリーグでは初めての大阪朝高ハーフ団が実現した。

 リスタート後、神戸製鋼ゴール前で梁からFLトム・フランクリンへボールが渡る。続いて李へ。李がナエアタへパスしたボールをNECがインターセプトし、攻撃へ転じた。最後はNEC新加入のイングランド代表SOアレックス・グッドの器用なボール運びでトライへ。グッドは試合終了前にも絶妙なキックでボールを神戸製鋼ゴール前へころがし、追う李らをしり目にチームの連続トライにつなげた。47-38、コンバージョン成功なら47-40でNECにも勝点1が入ったが、失敗し終えた。

 梁は後輩との出場を「同じ母校の後輩とハーフ団を組めたことをとても嬉しく思います。試合で組んだ感想は、出場時間が少なかったのであまりないですが、スンシンの印象としては20歳とは思えないくらい堂々としていたと思います」と振り返った。

 李も率直なデビュー戦の感想を寄せてくれた。「学生ラグビーとは違う雰囲気で高いスキルと激しいフィジカルのぶつかり合いが印象的でした。個人としてここが通用するというのは感じとれなかったですが、神戸のラグビーをやりきる事でゲームに勝てるという自信がつきました。正秋さんと組むときは常にコミュニケーションをとってくれて、細いフィードバックもくれるのでやるべきことが明確になるので助けられています」

 課題も見えている。「ディフェンス時のタックルスキル、プレースキック、ドロップキック」という。

 兵庫県に生まれた李。3兄弟が全員、大阪朝高ラグビー部へ。長兄、承記(すんぎ)氏は3年時主将として2014年度第94回全国高校大会に出場。この時の3年生には、流経大を経て2019年春に神戸製鋼に入団したFB韓尊文(はん・じょんむん)、法大に進んでホンダヒートに加入したSO/CTB呉洸太(お・ぐぁんて)、2年には前述のクボタ・金秀隆らがいた。承記氏は法大へ進み2019年春、卒業後に地元・兵庫へ戻った。「見ているこっちがもっと緊張しました。短い時間の出場でしたが、入団早々トップリーグを肌で感じる大変良い経験ができたのかなと思います」と温かく見守る。
 次兄のHO承爀(すんひょっ)は今春、帝京大からホンダヒートへ。リーグでの兄弟対戦も実力でつかみたい。

 梁は先輩として「練習の時からも感じることですが、すごい選手たちに囲まれながらも、物怖じしない感じは本当にすごいと思います。ポテンシャルが非常に高く、自分でキャリーするのも上手ですし、高いスキルも持っています。そういった強みを活かしつつも、今後はゲームコントロールの面で、経験のある選手たちから学び、チームを勝利に導ける選手になってほしいです」と結んだ。

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