国内 2020.12.31

2連覇へのジェットコースター。早大・丸尾崇真主将は「選手権決勝まで課題を克服する」。

[ 向 風見也 ]
2連覇へのジェットコースター。早大・丸尾崇真主将は「選手権決勝まで課題を克服する」。
早大の丸尾崇真。大学選手権準々決勝・慶大戦の前半5分にトライする前のシーン(撮影:松本かおり)


 このチームにはこのリーダーが必要だ。早大ラグビー部の権丈太郎FWコーチは、今季主将の丸尾崇真をこう見た。

「裏表がないし、本当に早稲田が大好きな人間。意志が強い。正しいことは正しい、だめなことはだめと言える」

 母校のFWコーチとなった昨季は、3年生だった丸尾らを指導して11シーズンぶりの日本一に輝いた。

 しかし、昨季までの主力の多くは卒業した。陣容が様変わりした早大が2連覇を果たすには、順調に階段を駆け上がるより、ジェットコースターに乗って上下動を繰り返すのが吉と権丈は見た。大学選手権決勝の際、最高到達地点にいるイメージだ。

 そこで白羽の矢が立ったのが、自分にも周りにも厳しい丸尾だった。前年度の中心選手が異なる後輩を次期主将へ推すなか、権丈は丸尾の主将就任を促した。

「あえて強烈な個性がある崇真を主将にしたので、順風満帆にいくものと思っていない。確かに、去年の4年生がいいと言った選手に任せても、その選手が周りに気を遣っていいチームにすると思います。ただ、今年の早稲田はチームの最大値を狙わないと優勝できない。崇真にぐいぐいと引っ張ってもらって、それを皆が支えるというふうにしたい。まだ結果は出ていないのですが、今年の組織は崇真が主将じゃなきゃだめだとずっと思っていた。困難な時ほど、彼の早稲田への愛がチームを強く導いてくれると思っています」

 小学1年から川崎市ラグビースクールに通い始めた丸尾は、当時強かった早大ラグビー部に憧れた。系属の早稲田実業中、高で楕円球を追い、将来の早大入りを目指してきた。

 大きくなって早大が日本一から遠ざかるのに触れると、「僕は見るしかできなかったですけど、悔しかったです」。入学前から当事者意識を持った。権丈が言う丸尾の「愛」とは、こういうものを指すのだろう。

 2年時からレギュラーとなった丸尾は、FW第3列に入ってスピード豊かな突破と激しいタックルを繰り出す。何より好きなチームを勝たせたいがゆえ、味方にも厳しい視線を向ける。社会情勢の変化で練習試合が少なくなった今季、控え部員にこう発破をかけた。

「試合で誰かを倒すんじゃなく、自分の1つ上(のカテゴリー)の選手をこの上井草(本拠地グラウンド)で倒せばいい。それをコーチ陣は見ている。ここでもっと、バトルをしてくれ」

 部員数100名超とあって、物理的に定位置から遠い者も少なくない。しかし丸尾は、同情論とは距離を置くのである。

「本当の意味で努力をした人には、ちゃんとチャンスは来ているとは思う。コーチ陣も鬼ではないですし。そのチャンスをものにするかどうかは、その選手次第です」

 10月から関東大学対抗戦Aに参戦。途中までは「順風満帆」に映った。開幕6連勝で首位に立った。

 4年で左PRの久保優も、丸尾組における自分たちの在り方を理解していた。

 丸尾に負けないリーダーを部内に1人でも多く作るのが、4年生の仕事だ。

「崇真は人一倍リーダーシップが強い。ただ、それに頼り切ってしまい、あいつがけがなどでいなくなったらどうなるんだという話になったこともあります。全員が何をしたいかの考えを持たないとだめ。(その流れで)僕も、自分で(さまざまなことを)やろうとし過ぎない。頼りになる下級生がいるので、彼らにも任せながら皆で頑張れたらいいと思います」

 12月6日、東京・秩父宮ラグビー場での最終戦では明大に14-34で敗れた。しかし、あくまでジェットコースターが下り坂を通っただけとも取れる。そもそも「順風満帆」と無縁かもしれないのが、丸尾率いる早大のビクトリーロードだ。

 丸尾は、明大戦でうまくいかなかったスクラム、ラインアウトでの「自分たちの形」を再点検する。控え組の分析も詳細に及んだ。

 続く19日、秩父宮での大学選手権準々決勝では対する慶大のラインアウトに圧力をかけられた。前半のうちに点差をつけ、29-14と白星をつかむ。

「相手が(明大から慶大に)変わったこともありますが、ラインアウトでプレッシャーをかけられ、スクラムを安定的に組めた」

 手ごたえをつかんで、1月2日の準決勝に挑む。秩父宮で帝京大を迎え撃つ。

「トーナメントは負ければ終わり。相手への対策も考えなきゃいけないですが、自分たちを一日、一日伸ばしていくことにフォーカスしたい。自分たちの力を伸ばしたうえで、帝京大学に挑みたいです」

 決勝は11日、東京・国立競技場でおこなわれる。現状では準決勝に集中しているだろう丸尾は、対抗戦の期間中から「課題を克服し続けていまがある」と強調。こうも示唆した。

「選手権の決勝まで、いや、決勝が終わるまで課題を抽出し、克服し続けたいです。最後の試合が終わるまで、このチームは成長し続ける。このチームが完成するかどうかなんて、わからない。むしろ、完成しないと思っている」

 本当の意味で最後まで高みを目指す。仮に未完成のままでも、優勝する。

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