【ラグリパWest】3連覇に挑む。奈良工業高等専門学校
奈良の学校創立は創部の1年前だ。現在の学科は5つ。機械、電気、電子制御、情報、物質化学。男女共学で、定員40人の各学科を1クラスずつ持ち、一学年に200人ほどが学ぶ。総人数は1000人ほどだ。
同じ敷地内には100人規模の寮があり、全国から進学は可能だ。ラグビー部の入寮者は2人。滋賀と兵庫の出身者である。
チームは今年、2人の5年生による共同主将制を敷いた。電気学科のPR小泉太護(だいご)と機械学科のFL板垣壮流(たける)である。森は説明する。
「違うタイプで資質を補おう、と思いました。小泉は自分でどんどんやっていくタイプ。板垣は周りが見えます」
この2人は経験者だ。その数が多いのも奈良の特長。25人中、実に17人にのぼる。
小泉は生駒少年ラグビースクール、板垣は郡山中で競技を始めた。寮生の1人、3年生WTBの大串蓮は強豪の芦屋ラグビースクール出身である。
県内には、高校ラグビーにおける二大巨頭がある。冬の全国優勝6回の天理と同準優勝4回の御所実だ。
奈良は勉強と全国優勝を同時に狙える。その部分も経験者の入学にプラスに働く。
楕円球を持ったことがなくとも、目立つ選手もいる。2年生LOの土田航大のサイズは192センチ、94キロ。今年8月、コロナの影響でオンラインになったTIDユースキャンプに参加した。「ビッグマン、ファーストマン」で通る、日本代表になる可能性を秘めた原石探しの合宿である。
コロナ禍は学校にも及ぶ。閉校は4か月近くに及んだ。その間、講義も練習もオンライン。7月末に全体練習は解禁されたが、高校の全国大会予選とかぶり、近畿大会前に練習試合は3つしか組めなかった。
その流れの中で、約10か月ぶりの公式戦にもかかわらず、神戸に圧勝できた。
「上級生が作ってきてくれた財産が残っていると思います」
森は持ち前のパスラグビーや持ち場を決めた動きができたことを口にする。
前回の公式戦は全国大会決勝。仙台に33−0と完封する。1月9日のことだった。
51回目の全国大会は、例年通り来年1月4日、神戸・ユニバー記念競技場で開幕する。
奈良は15年連続20回目の出場。全国から10校が集まるため、3つ勝てば、3連覇がなされる。その偉業はこれまで、北九州、仙台、神戸の3校しか成し得ていない。
高専の卒業時の選択肢は3つ。短大卒の肩書での就職、大学への3年時編入、大卒の資格を得る母校の専攻科進学である。
小泉と板垣はともに大阪府大への編入が決まっている。
ラグビーでも有終の美を飾りたい。