流経大・松田一真は「嘘」をつかない。優勝の可能性は最後まで残る。
ただしこの4年間で、理想と現実のギャップを乗り越えたことはあった。入学前にリーグ戦での優勝経験もあるクラブをシンプルに「強い」と見ていたが、いざ内部に入れば結果を出すのにさまざまなハードルを乗り越えていく必要があると感じた。
「すごく努力をしました。それでも勝てない現実であったり、高校まではなかった留学生とのコミュニケーションであったり…」
松田の入学以降、リーグ戦での成績は3季連続で3位。昨季は一昨季5位の日大に28-34で屈した。松田は当時の4年生が「日大に敗れたのは4年生の責任」といった趣旨で話しているのを聞いたようで、「いまならその意味がよくわかる」とのことだ。
坂本主将によれば、積賢佑前主将(現クボタ)率いる昨季のチームはシーズン終盤から練習後の選手間ミーティングを導入。身に付けた技能や翌日の課題を共有し、底力を醸成。大学選手権3回戦では、2017年度まで同9連覇の帝京大を破った。
坂本はこの風習を「いい文化」として今季のチームでも実施。松田もその間、忌憚なく意見を述べた。開幕前の筑波大との練習試合で敗れた際にはこうだ。
「チームが壊れることが怖くて言わないのはなしにしよう」
結果、リーグ戦では開幕から5連勝。前年度に敗れた日大にも、11月14日に40-14で快勝した。特に21-7で迎えた後半開始早々、敵陣深い位置で相手ボールスクラムをターンオーバー。
スクラムは向こうの長所だったが、最前列中央の松田は「真っ向勝負、小細工なしでぶつかって勝つことができた」。それまでチームの課題が「後半の最初の20分間」のパフォーマンスだったとあり、鬼門の時間にいいパックを組めたことに満足できた。
「ヒット(組み合う瞬間)とドライブ(組み合った後)に分けて(意識して)やっているんですけど、ヒットの意識は浸透していて、バックファイブ(後列5名)もその意識でやっている」
ここまで唯一の全勝だった東海大は、同じ12月5日の秩父宮でのリーグ最終節を辞退した。部内で新型コロナウイルスの感染者が増加。対する日大に不戦敗という形となった。
勝利で「4」を得られる勝ち点制度が敷かれるなか、流経大は東海大を勝ち点「4」の差で追う。勝てば流経大、東海大、日大の三つ巴となり、12月3日に追加されたルールのもと「勝ち点が並んだチーム間の試合を除いた、残りの試合における総得失点差」で順位が分かれる。
大東大との試合では大量得点差での勝利が期待されるが、当事者は勝利以上の価値を追い求めている延長で目標達成を狙うだろう。松田は言う。
「一戦、一戦、満足しないで、チームで戦い抜く。現時点で日本一かと言われたら違う。レベルアップしないと。ここからは、強い相手しかいないので」