国内 2020.10.11

江良颯が「のびのびできている」。帝京大、開幕2連勝。

[ 向 風見也 ]
江良颯が「のびのびできている」。帝京大、開幕2連勝。
再三に渡ってゲインラインを突破した新人HO、江良颯(撮影:長尾亜紀)

 2017年度まで大学選手権9連覇の帝京大にあって、新人が存在感を示す。

 大阪桐蔭高卒で高校日本代表の江良颯が、新人ながら主力HOに定着。同じ経歴を持つ奥井章仁とともに、10月4日からの関東大学対抗戦Aで2戦連続での先発を果たしている。岩出雅之監督は褒める。

「1年生じゃないみたいね。元気でタフで、挑戦心に満ちた選手だと思います。奥井もライバル意識があると思います」

 10月11日、東京・帝京大グラウンドでの2戦目では、2トライを奪取。いずれも、複数名で組むモールの最後尾から飛び出す形である。得点シーン以外の場でも光った。相手ボールのラック周辺から飛び出して力強いロータックルを放ったり、味方のパスコースへ鋭角に走り込んで防御に切れ目を入れたり。

 前年度の対抗戦で3位扱いだったチームは、同4位扱いの筑波大に54―17で大勝。江良は後半11分にお役御免も、主催の関東協会選定のマン・オブ・ザ・マッチに輝く。

「自分がやるべきことをやって評価していただき、光栄な賞をもらえてうれしく思います」

 日体大を98―10で下した初戦(帝京大グラウンド)でも、好タックルと好ランを披露している背番号2は「周りの先輩がサポートしてくれて、自分がのびのびできているのが活躍できる理由です」。記者団が質問をチームへ委託する形でのインタビューを通し、丁寧に話す。高校と大学との間のフィジカリティのギャップについては、こう捉えている。

「最初は練習のなかで(レベルの差を)痛感して、ウェイトトレーニングの量を多くして鍛えました。その結果、ギャップを気にせずにプレーできています」

 この日の帝京大は、筑波大のダブルタックルでランナーが後退させられたり、接点の球への絡みで反則を誘発されたりと、序盤は接戦を強いられた。前半7分に0―7と先制され、7-7の同点で迎えた26分には自陣深い位置からの速攻を許し7―14と勝ち越される展開に持ち込まれた。

 しかし帝京大は、圧がかかる時間帯も攻撃中の接点への分厚いサポートを意識する。

 14―17とリードされた直後の前半33分頃には、グラウンド中盤左のラインアウトから素早く中央へ展開する。

 さらに左へ折り返して奥井が鋭く突破すると、奥井が捕まってできた接点の左脇を江良が直進。真正面の相手を蹴散らす。

 まもなく江良は追いすがる2人の防御に捕まるも、周辺にいた援軍が相手の排除とボールの保護に動く。筑波大は、タックラーが撤退せず攻めの妨害をするノット・ロール・アウェーの反則を犯す。

 続く36分、敵陣ゴール前左のラインアウトからモールを組み江良の1本目のトライを生み出した。ゴール成功で21―17。

 帝京大はハーフタイム直前にも孤立したランナーを囲んで筑波大の反則を誘う。再び敵陣ゴール前左でモールを組み、ペナルティートライ奪取で26―17と白星に接近した。

 後半はSOの高本幹也の配球が冴え4トライを記録し、守ってはゴールラインを割らせなかった。ゲーム主将だったFBの奥村翔副将は、江良と似た形式の問答でこう伝えていた。

「終始ブレイクダウン(接点)で筑波大さんの圧力がかかったものの、一歩も引かずにチームの流れを作れたと思います。80分間通してタフなゲームになると予想しました。そのなかで修正、アジャストを繰り返し、いいゲームを作っていこうと取り組みました」

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で各クラブが春、夏の試合を十分におこなえない状況下、岩出監督は「今年は(試合の)経験が少ない。マインドのコントロールの部分で、リードしてゲームを進めること、リードされてゲームを進めることが勉強になったんじゃないですか。後半に立て直し、タフになり…。得たものが大きい」と頷く。

「筑波大さんのタフさに受けないのが一番(の焦点)でした。得点は、その積み重ねです」

 3季ぶりの日本一に向け、生来の勤勉さ、要所での集中力という長所を見直しつつある。

セットプレーでもキーマンになるHOポジションを任される(撮影:長尾亜紀)

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