ルーキーも爆発の帝京大は「健全」を意識。頂点に立つための「空気」が戻ってきた?
新人も躍動する。高本、上山と同じ高校からやって来た江良颯と奥井章仁は、それぞれHOとNO8のスターターを務める。
江良はモールからのフィニッシャーとなるだけでなく、ミスボールを拾った味方へのサポートでもトライを生んだ。自陣ゴール前の防御局面では、強烈なタックルを繰り出した。
奥井も攻守で力強さを発揮。攻撃中に倒れる際は、持っている球を相手に触られぬ場所へ置く。基本をおろそかにしない。指揮官は続ける。
「しっかりした1年生だと思います」
昨季は加盟する関東大学対抗戦Aで9季ぶりに優勝を逃し、大学選手権でも3回戦敗退と苦しんだ。今季も新型コロナウイルスの感染拡大に伴い4月上旬で一時解散を余儀なくされたが、「そこで、揉まれました。しっかりとやらなきゃいけないことを、個人、集団として学んだ」と指揮官。感染防止のためのルール設定が、組織を引き締めたという。
この春、普段は全部員が入る寮へ残ったのは約20名。過半数の部員が実家へ戻るなか、岩出監督は「健全(健康、安全)」に関する部内のプロトコルを作成。オンライン会議ツールのZOOMを活用し、選手との面談でその内容を共有した。
「(解散後)最初の10日間くらいは精神的な不安もたまっていただろうから、のんびりしたらいいと思っていました。ただ、解散したということは集合がある。そこで意味のない集合はできない。責任感を持って安全に活動するには、学生が(必要な感染症対策を)わかっていなくてはだめ。我々がやって欲しいと伝えても、本人がその価値をわかっていなくては意味がないんです。彼らの理解を待ちながらだったので、時間はかかります」
5月以降は選手が段階的に寮へ戻り、7月には大半の選手が復帰した。当初は「健全への意識づけだけ。ラグビーに熱を入れて体調を壊してもよくない」。手指消毒やマスク着用を習慣化させ、少人数制のトレーニングで徐々に体力を戻した。
戦法やスキルを落とし込んできたのは8月中旬の菅平合宿以降。それでもこの日までには、「あそこは雑だったねというプレーが2~3あったくらいで、集中力の高い試合をしていました」と手ごたえをつかめた。丹念に土壌を耕した分、作物が芽を出すのは早かったか。
「気持ちの入った選手はいいプレーをしている。それを目指す空気が、チームに戻っている。大切なことは、いかに健康で、安全である状態を油断なく作っていくかです。去年の反省を含めてプログラムを整理しましたが、高い完成度を望んでも時間が足りない。これはどこのチームも一緒です。でも、学生がその気になって挑戦をしっかりできるシーズンにしたいです」
関東大学対抗戦開幕は10月4日。帝京大は自軍グラウンドに日体大を迎える。