NTTコムはレイドローに何を求める? グラウンド内外への影響力に期待。
首尾よく事が運べば、レイドローに日本の経営者向けのリーダーシップ論を語ってもらう時が訪れるかもしれない。内山GMが続ける。
「全員が役割を果たすこと、目的意識を共有すること、自分たちに疑いを抱かないことが必要…。こういう(レイドローが普段から強調する)ことを(希少な実体験に基づき)教えてくれる人はなかなかいない。正確な判断を下せるのは(周りからの)信頼があるからだ、自分の置かれた環境で自分を証明するため、努力し、(その場に)適応して学んできた、という話もします。まさにこれは、道徳の世界の話です。ラグビーの強化のためだけに選手を獲得するのではなく、選手をオープンにしていって、ラグビーの醍醐味をいろんなところに枝分かれさせ、子どもたちへの教育、管理職向けの講演などとタイアップしたいと考える…。そういうチームは、これから多くなると思いますよ」
日本では2022年1月以降、従来のトップリーグと異なる新リーグが発足予定。クラブの事業性(チケット販売などによる利益の確保)や地域活動がこれまで以上に要求される。
内山GMは以前から、新たな取り組みを始める際は所属選手の意見を聞いてきているという。特に日本代表経験者で2019年加入の山田章仁からは、顧客満足度を高める目的で有益な話し合いができているそうだ。
「勉強になりますよ、彼らの話。最近は社員選手でもいろんなことを考えてくれる人もいる。そもそもトップリーグに来る選手って、もともといたチームでリーダーになっているなど(社会人としても)光るものがある。昔、ラグビーをやっていた人たちって、社会でも偉くなっているじゃないですか。いまは(競技力向上で)仕事と向き合う時間が減っているだけで、持っているポテンシャルは高い」
欧州市場の主役クラスたるレイドローがその輪に加われば、マネジメントサイドと選手サイドの相関関係はさらにおもしろくなるか。内山GMは、今度の新リーグの事業計画についてレイドローの見解を聞きたいという。
「一流の目線で評価してくれるのはものすごいプラスです。僕ら(社員スタッフ)も(これからの変化に)適応し、学び続けなきゃいけない。その学ぶ機会を、選手たち(との交流)に求めているところがあります。やはり、プロの世界のいろいろなことがわからないから。これからの各チームは、強化につながり、かつ学ばせてもらえる選手を(獲得対象として)選んでいくようになるんじゃないかな」
欧州ラグビー界きっての大物の波及効果を十分に享受すべく、契約期間は2年とした。レイドローを呼んだ効果が、レイドローが去った後にも見られたらいい。