クレルモン松島も挑むフランス・トップ14が今週末開幕 トゥールーズのコルビは松島を称賛
真夏の日差しが照りつけるスタジアム。ベンチで待機している選手も、スタッフも、観客もマスクを着用している。「スタジアム内はマスクの着用が義務付けられています」という場内アナウンスが繰り返し聞こえてくる。
8月後半、フランスではトップ14開幕前の仕上げのプレシーズンマッチがおこなわれた。ラグビーがフランスに帰ってきた。
先週末、松島幸太朗の所属するクレルモンはリヨンと対戦予定だったが、リヨンのチーム内で新型コロナウイルスPCR検査を実施したところ陽性反応者が確認されたため、試合は中止に。クレルモンのチーム内で紅白戦ならぬ、チームカラーの『黄青戦』をおこなった。
開始早々、松島はブルーチームのBKをリードしてイエローチームのディフェンスを脅かし、数的優位を活かしてCTBピーター・ベサムへつなぎ、最初のトライのきっかけを作った。その後、イエローがFWでトライを重ねてハーフタイム。後半になると、前半はイエローのSOでプレーしていたセバスチャン・ベジーが本来のポジションであるSHに入り、またブルーでSHをしていた元フランス代表モルガン・パラがイエローのSOに入った。この新しいHB団が勢いを与え、イエローが3トライを加えて勝利した。
ベジーは、クレルモンの新加入選手で、松島と同様に注目されている。トゥールーズから惜しまれながらも、新しい環境でさらに成長するために移籍を決意。クレルモンには、あのグレイグ・レイドロー(現 NTTコム)にもスタメンの座を譲らなかったパラがいる。2人のポジション争い、また2人で構成するHB団も楽しみだ。
クレルモンの開幕戦の相手は優勝候補のトゥールーズ。現地メディア「ラグビーラマ」のインタビューで、昨年のワールドカップチャンピオンで、トゥールーズ所属の南アフリカ代表WTBチェズリン・コルビが松島について質問され、「U19で対戦したことがあるけど、彼はすでにすごい選手だった。僕たちのようなサイズの選手が、彼のような素晴らしいプレーができるというのがとても嬉しい。彼は何もないところからでも、仕掛けることができる。彼の持つXファクターでチームに勢いを与えるだろう」と答えている。
今季の優勝チーム予想アンケートを現地のミディ・オランピック紙がトップ14のコーチに実施。1位になったのはボルドー、2位がラシン92とトゥールーズとなっている。3チームともプレシーズンマッチで全勝し、仕上がりの順調さを見せているが、特にトゥールーズはラ・ロシェルに38-0で完封勝利するなど好調。開幕からトゥールーズらしい強さと華のあるプレーを見せてくれそうだ
9月4日に開幕節の第1試合として予定されていたスタッド・フランセ対ボルドーの延期が発表された。8月11日、スタッド・フランセで20人以上のコロナ陽性反応者が確認され、チーム全体が2週間の自宅待機となった。その後12人に肺の損傷が見つかり、彼らはさらに1週間自宅で安静にすることが求められた。この中にはチームに11人いるフロントローのうち9人が含まれており、3週間の自宅待機後、PCR検査や一連のメディカルチェックをクリアして、8月31日に練習に復帰、軽いランニングを始めたばかり。9月4日の開幕戦に出場させるのは健康上のリスクが高く、リーグに試合の延期を求めていた。
リーグ運営団体LNRが直前に発表した大会用メディカル・プロトコルでは、「陽性反応者が3人以上出た場合は、試合を延期する」と陽性反応者に関する条項のみ。「すでに陰性だが、試合をさせるのは選手の健康を脅かす危険がある」というケースは想定されておらず、不戦敗という意見もあったが、「選手の健康が何よりも大切」という判断のもと、延期が決定された。
フランス国内での新型コロナウイルス感染件数増加にともない、TOP14のチーム内でも陽性反応者が出てきており、予定されていた練習試合のうち、7試合が中止された。
「僕たち選手は、感染しない、させないように気をつける責任がある。ラグビーの存続がかかっている。試合が中止になるかもしれない。それでも常に最大限の準備をするだけ」と、2018年U20世界チャンピオンで、昨年のワールドカップにも出場していたCTBピエール=ルイ・バラシ(リヨン)は、状況に適応することの大切さを淡々と話す。