【ラグリパWest】気がつけば18年目。南浩史[グリニッジ・エンタープライズ代表]
南十字星が輝く大陸には3年いた。最大都市のシドニーと首都のキャンベラに住む。
シドニーではランドウィックに所属する。そこにはデビッド・キャンピージーがいた。
「雰囲気があって、大きかったですね」
代表キャップ101を誇るFBと同じクラブだったことは思い出のひとつだ。
滞在の3年間は、語学学校で英語を勉強して、ビジネスの専門学校に移った。その中で磨かれたのは、言葉より、人間力である。
「日本ほど電化製品が豊富でない中で、ごはんを鍋で炊いたりしていました」
現状でどう生きるか。その学びになる。
帰国後はゴルフ専門店などで働いたが、組織での出世より、自己責任を好んだ。
創業後、海外へメールを頻発する。
「日本は会社と話をしますが、海外は人とのつながりがものを言います」
異国に対する慣れと会得した英語は飛び込み営業の軸になった。
「反応があれば、すぐに現地に飛びます」
生命線はこのフットワークだ。
今は、ビジネスと併せてラグビー界の良化も考える。
「チャレンジできるようないい環境を作るのも自分のつとめだと思っています」
原田隆司がプロのトップレフェリーだった頃、和菓子の叶 匠壽庵(かのうしょうじゅあん)をスポンサーとして紹介した。経営陣にラグビーを通した知り合いがいた。
資金援助はパフォーマンスに専念できる助けになる。原田への支援は、日本ラグビー協会の審判部門長になった今も含め、10年以上も続いている。
これから、南が力を入れたいのは若者の留学サポートである。
「サッカーなら、久保君はスペイン語、永友君はイタリア語を話せますよね。ラグビーでそんな人は岩渕さんくらいじゃないですか」
久保建英(たけふさ)はレアル・マドリードに所属、長友佑都はインテル・ミラノにいた。岩渕健輔はイングランドのサラセンズでプレー。英語は堪能だ。今は日本ラグビー協会のかじ取り役である専務理事である。
南は選手たちの国際化も支えていきたい。
未来を思い描く中、現実として新型コロナウィルスが猛威をふるっている。
「学校を回ってもイベントがなくなっている。先の見通しが立ちません。でも、だからこそお客さんに本当にすすめられるものを考え、作っていく時期ではないかと思っています」
南は「商売」と「金もうけ」を分けている。
「商売はなくなっても何かが残る。金もうけはなくなったら、友人もいなくなります」
その生きざまが18年の歴史を生んだ。それはこれからも変えることはない。