コラム
2020.06.25
【コラム】 雨の朝、最初の一歩。
毎日走ろうと思っていても、天気や体調が悪い日は「また明日」と見送ってしまうことがある。でも、「どんな自分になりたいか」の像を明確に描ければ、自分の背中を押すことができるかもしれない。「あの福岡堅樹にだって、弱い部分があるんだから」。そうやって自分の弱さを認められれば、梅雨の日の朝に最初の一歩を踏み出せる気がする。
福岡の決断でもう一つ。彼の進路を後押ししたのは、パナソニックというチームの懐の深さだった。飯島均GMはいつもの豪快な口調で楽しそうに笑っていた。
「日本ラグビーにとっては残念かもしれないけど、私は色々な人間がいるチームが好きなんです。うちは色々なキャラクターがいて漫画のドカベンみたい。福岡選手は(ピアノと野球を両立した)殿馬かな。とにかく、あんなにすごい選手が今度は医学に挑戦する。きっとオリンピックに出られなかった悔しさもバネにして、すごいお医者さんになりそうな気がしませんか? それにこういう道もあるんだ、と彼の後を続く第2、第3の福岡堅樹が現れるかもしれない。それがすばらしいんですよ」
田中史朗や堀江翔太をスーパーラグビーに送り出した時と同じだ。たとえチームにとってマイナスだとしても、夢に向かって進む選手たちを支えることに躊躇がない。太田の地で、福岡堅樹はラグビー選手として磨かれた。そして多様な個性と交わることで、自分らしく生きることの価値をかみしめたのではないか。
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