勝っても負けても。明大→キヤノンの安昌豪が突く核心とは。
1月2日、東京・秩父宮ラグビー場で大学選手権準決勝があった。ディフェンディングチャンピオンだった明大は東海大との接戦を29-10で制し、3大会連続での決勝進出を決める。
しかし、フィールド上で大喜びする様子はなかったような。そんな仮説へ首を縦に振ったのは、安昌豪だった。抑揚をつけずに言う。
「まぁ、実際は嬉しいんですけど、僕は感情を爆発させるようなことはなかったですね。次(決勝戦)が控えているということもありますし、僕たちが勝ったということは東海大さんが敗退したということ。あからさまに喜んでそれを相手に見せつけるのはノーサイド(の精神)ではない…。そういう心構えはあったと思います」
大阪朝鮮高を経て明大に入り、1年時から部内のレギュラー争いに絡む。4年時はリーダー陣の一角に名を連ねた。
最後の大学選手権を準優勝で終えると、国際リーグのスーパーラグビーへ日本から挑むサンウルブズへ練習生として合流。さかのぼって大学2年時には、20歳以下日本代表に名を連ねている。身長178センチ、体重110キロと一線級にあっては大柄ではないが、よく動くうえ手先の器用な左PRとして将来を嘱望される。
あの日の準決勝の後に勝者としての態度を自己分析したのは、そうした有望株だった。
学生最後の試合で早大に敗れた直後は、「(防御時などの)横とのつながりが少し切れたのかな」と反省。初めてプレーした東京・国立競技場で、互いの声が「(上空に)抜けちゃう」との感覚を抱いたという。
ひとつの勝負の背景から、全ての勝負に通じそうなエッセンスを抽出していた。
「トライを取られるたびにしっかりと(修正点について)トークはできていたんですけど、やはり(必要なのは)プレー中のトークですよね。プレーが終わってからはなんぼでも言える。プレー中にどれだけ修正できるかが大事だと思います」
嬉しい日も、悲しい日も、一喜一憂せずに自分の心と向き合い、ものごとの核心を突く。将来、生まれ育った国を代表する日が来ても、その態度は変わらないだろう。