無観客試合をいかに盛り上げるか… 豪州の13人制ラグビーでは偽の“観客ノイズ”で演出
新型コロナウイルスが収束に向かっている国ではスポーツ再開への動きが出てきており、楕円球を使ったプロスポーツがいくつかあるオーストラリアでは、日本でおなじみのラグビー(ラグビーユニオン)より先に、13人制のラグビーリーグ「NRL(ナショナルラグビーリーグ)」が約2か月ぶりにキックオフを迎えた。
感染拡大を防ぐためにファンのスタジアム入場は禁じられており、無観客での開催だが、NRLを中継するテレビ局は少しでも臨場感を出すために、観客のざわつきや歓声といった“クラウドノイズ”を採り入れている。試合展開に合わせて、あらかじめ収録してあったクラウドノイズを流し、選手のブレイクスルーなどで音量は高まり、トライシーンでは最高潮に達する。
実際に映像を見ると(NRLは公式のツイッターやYouTubeなどでハイライト動画を公開 ↓)、空席が映らなければ無観客試合だとは思えないほど、ゲームの雰囲気を演出している。
スタンドにファンがいない世界で、放送局には何ができるかを考えての試みだが、NRLを中継するFox Sportsのテレビ局長は「ゲームの主役は選手であり、音響効果ではない」とコメントしている。肉体が激しくぶつかる本物の音や選手のコミュニケーションなどを聞くことができるよう、ノイズの追加は微妙にすることも意識し、シーンに応じてうまく使い分けるようにしているようだ。2つのチャンネルで同時放送し、ひとつは人工的なクラウドノイズ入りで、もうひとつは何も加えないそのままのライブを放送する場合もある。
“演出”が入った中継を見たファンの反応はさまざまだ。
「素晴らしいと言わざるを得ない。クラウドノイズが巧みに使用され、実際にファンがいるように感じる。選手は士気が上がると思うよ」
「フェイク(偽物)のクラウドノイズ、なかなかいいじゃない! こんな時だからこそ、いろいろ試さなきゃね」
「静かなのより全然いいよ」
といった賛成意見がある一方、反対の声も少なくない。
「オレは、スポーツはリアル(本物)だから好きなんだ。フェイククラウドノイズはでたらめだ。取り除いてくれ」
「なにしてくれたんだよ。ひどいもんだ。必要ない。試合のサウンドだけで十分だ」
アメリカのフォーブス誌によれば、先駆けて無観客試合にクラウドノイズを採用したサッカーのブンデスリーガ(ドイツのプロリーグ)の中継に関する非公式調査では、1500人のツイッターユーザーのうち、37%が好意的で、33%が嫌い、30%がどちらでもない(未定)だったという。
無観客での開催に踏み切った他のスポーツでも、試合会場の雰囲気を盛り上げるため、厚紙などを切り抜いてファンを模ったり、人形を客席に座らせるなど、さまざまな工夫がおこなわれている。
オーストラリア国内のラグビーユニオンは、スーパーラグビーチームなどが参加する大会を7月上旬から開催することを目指している。
Croft with the burnnnn 🏃🏾♂💨#NRLBroncosEels #TelstraPremiership pic.twitter.com/GcAfomiaiX
— NRL (@NRL) May 28, 2020