コラム 2020.03.26
【コラム】ダンスとパスと、コッペパン。

【コラム】ダンスとパスと、コッペパン。

[ 谷口 誠 ]

 同誌で別のOBは、助っ人を「俄(にわ)か部員」とも表現している。昨年のワールドカップの後、流行語にもなった「にわかファン」が、ラグビー界に新しい風を吹き込んでくれた。昔の「にわか部員」もクラブにとって大きな存在となったようだ。一度、プレーしたことで楽しさを知ったのか。コッペパン組10人のうち9人が正式に入部したという。

 コッペパンやダンスがいつの時代にも正しいわけではない。その時の環境、若者の気質に合った手段が必要で、列島各地の若いラガーマンが既に頭をひねっているだろう。今はSNSのように顔を合わせずにつながれる仕組みもある。選択肢は昔より多い。

 一方で、新しい仲間を集める時、変わらず必要とされるものもある。チームの哲学やラグビーの魅力を相手の心に届けるという本筋は言うまでもない。加えて言えば、遊び心や楽しさ、面白さも、新しい仲間の心を開かせるカギではないか。かつて、勧誘に苦闘した経験からはそう感じる。特に、社会の行く末すら霞が掛かったように見通せない、この春はなおさらだろう。

 ラグビーでは一つのタックルや会心の勝利、忘れられない敗戦でさえ、人生の糧になる。同時に、グラウンドの外での何気ない一幕、大笑いした場面も、一生の思い出になり得る。そして何年も後、ふとした時に心に喜びと余裕を与えてくれることがある。例えば、満開の桜にウイルスの影がちらついて見えるような時。夜桜の下で踊る人の姿がそこに重なり、やがて大きくなっていく。

【筆者プロフィール】谷口 誠( たにぐち・まこと )
日本経済新聞編集局運動部記者。1978年(昭和53年)生まれ。滋賀県出身。膳所高→京大。大学卒業後、日本経済新聞社へ。東京都庁や警察、東日本大震災などの取材を経て現部署。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科で社会人修士課程修了。ラグビーワールドカップは2015年大会など2大会を取材。運動部ではラグビー以外に野球、サッカー、バスケットボールなどの現場を知る。高校、大学でラグビーに打ち込む。ポジションはFL。

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