コラム
2020.03.26
【コラム】ダンスとパスと、コッペパン。
同誌で別のOBは、助っ人を「俄(にわ)か部員」とも表現している。昨年のワールドカップの後、流行語にもなった「にわかファン」が、ラグビー界に新しい風を吹き込んでくれた。昔の「にわか部員」もクラブにとって大きな存在となったようだ。一度、プレーしたことで楽しさを知ったのか。コッペパン組10人のうち9人が正式に入部したという。
コッペパンやダンスがいつの時代にも正しいわけではない。その時の環境、若者の気質に合った手段が必要で、列島各地の若いラガーマンが既に頭をひねっているだろう。今はSNSのように顔を合わせずにつながれる仕組みもある。選択肢は昔より多い。
一方で、新しい仲間を集める時、変わらず必要とされるものもある。チームの哲学やラグビーの魅力を相手の心に届けるという本筋は言うまでもない。加えて言えば、遊び心や楽しさ、面白さも、新しい仲間の心を開かせるカギではないか。かつて、勧誘に苦闘した経験からはそう感じる。特に、社会の行く末すら霞が掛かったように見通せない、この春はなおさらだろう。
ラグビーでは一つのタックルや会心の勝利、忘れられない敗戦でさえ、人生の糧になる。同時に、グラウンドの外での何気ない一幕、大笑いした場面も、一生の思い出になり得る。そして何年も後、ふとした時に心に喜びと余裕を与えてくれることがある。例えば、満開の桜にウイルスの影がちらついて見えるような時。夜桜の下で踊る人の姿がそこに重なり、やがて大きくなっていく。