逆転の常翔学園高。先頭に立つ為房慶次朗はパワフルで強気。
ぎらついた瞳に褐色がかった肌。たくましい首に顎。大阪は常翔学園高ラグビー部主将の為房慶次朗は、身長180センチ、体重114キロのサイズを誇る。タフなFWのなかでも我慢の強いられる、右のPRへ入る。
2020年1月3日、大阪・東大阪市花園ラグビー場。全国高校ラグビー大会の準々決勝に挑む。
相手は京都成章高。身長185センチ以上の大型FWを4人も先発させる。為房は、「FWが下がれば全体の士気が下がる。FWから、と声をかけました」。前半を8-19とリードされ、一時は逆転も後半24分にモールで20-24と勝ち越されたが、ひるまなかった。
「あきらめるな!」
仲間をこう鼓舞し、自らのパフォーマンスでも気持ちを表す。
一時20-19とした後半16分のトライは、為房のラインブレイクがきっかけだった。
敵陣中盤右中間に立っていた背番号3は、右斜め前方へ鋭角に駆け込みながらパスを受ける。死角を突く形で防御を破る。
カバーの防御と対峙すれば、サポートについたHOの山本敦輝にパスを放つ。そのまま勢いづいた常翔学園は、敵陣ゴール前まで進む。FBの吉本匠希のフィニッシュを促した。吉本が直後のゴールキックを決めたことで、リードを奪えた。
そして、4点差を追うロスタイム。逆転勝利を目指し、自陣から球をつなぐ。FLからWTBにコンバートの生駒創大郎が、たくましい下半身を誇るCTBの岡野喬吾副将が、防御網の隙間を豪快にえぐる。ストライドが大きい。捕まっても倒れない。
敵陣中盤での8フェーズ目。為房が右中間でパスを受ける。
「主将の僕が思い切りいかないと周りはついてこない」
目の前のタックラーにぶつかる。
「流れをつかみに行く勢いで、行きました」
当たり勝つ。
さらに迫りくるタックラーも、ワイルドに突き飛ばす。
為房が前に倒れる形でラックを作ると、まもなく左の攻撃ラインにパスが渡る。タッチライン際でノーマークの生駒が、貴重な決勝トライを決める。
インゴールで歓喜の輪ができた。コンバージョン成功と相まって、常翔学園は27-24で4強進出を決めたのだった。
「でかい相手にビビらずタックル、ボールキャリーをしてくれた。仲間に感謝したいと思います」
こう声を張る為房は、8対8で組み合うスクラムでも奮闘。相手がPRを入れ替えた瞬間には、「相手の元気なところを押したら、相手の元気がなくなる。一気にパワーを出しました」と好プッシュを決めた。「最初は組み方がわからなくて困っていた」と言うが、「先輩方に教えていただいて」。膝の位置を低く保ち、対面を突き上げるように押す。
「強いスクラムを組んだら、皆の元気が出る。3番の僕が押さなければ、誰が押すんだと」
5日の準決勝では、奈良の御所実とぶつかる。春の近畿大会で対戦した際は、0-7と完封負け。堅陣を張られた。今度は望む試合展開に持ち込み、リベンジを果たしたい。強気の船頭は誓った。
「7年ぶりのベスト4進出。7年ぶり(6回目)の優勝をつかみたいです」