国内 2019.12.15

松橋周平はサンウルブズではなくリコーで。その理由は…。

[ 向 風見也 ]
松橋周平はサンウルブズではなくリコーで。その理由は…。
今季リコーブラックラムズで共同キャプテンを務める松橋周平(撮影:向 風見也)


 今季の国内トップリーグは1月12日に開幕し、国際リーグのスーパーラグビーに挑む日本のサンウルブズは2月1日に初戦を迎える。ふたつのシーズンが重なるなか、日本代表に準ずる選手のプレー先の選択が注目されている。

 26歳の松橋周平は、「(今季は)リコーでいようと思っています」と応じた。

 リコー入部1年目の2016年に日本代表デビューを果たし、17、19年シーズンのサンウルブズに参加した身長180センチ、体重99キロのFW第3列。列強国の猛者とぶつかり合うなか、自分よりも身体の大きなタックラーの懐を突っ切るようなラン、ロータックル、ジャッカルという持ち味を高質化していた。

 ワールドカップ日本大会開催年だった今年は、本番に向けた日本代表の選考レースにも挑戦。ナショナルチームのジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチの率いるウルフパックと、トニー・ブラウン アタックコーチが指揮官を務めたサンウルブズを行ったり来たりした。今後について、当時はスーパーラグビー挑戦に意欲を燃やしていた。

 しかし、いまは…。

「僕としてはサンウルブズも好きですし、スーパーラグビーでできることは成長するうえではプラスになります。ただ、僕は今年リコーで(共同)主将をやることになって、チームのなかでもいい関係性が築けてきた。今年はリコーに賭けて、本当に優勝を目指したい、皆で勝ちに行きたいという思いが強くなりすぎて…」

 今季の日本代表入りへのサバイバルレースから外れてしまって以来、昨季トップリーグ8位だったリコーでの活動に従事。ここで仲間たちの心身両面での進化を目の当たりにし、このチームでしかできないチャレンジに「賭けて」みたくなったのだ。

 クラブは、日本人選手を対象とした新プロジェクトを遂行している様子。チームビルディングに関する専門の外部講師を週に一度のペースで招き、その一環で元日本代表主将の廣瀬俊朗氏からもレクチャーを受けた。自分たちの存在価値は。僕たちが優勝するとしたら、何ができた場合なのか…。組織の哲学をそれぞれの言葉で定義づけ、練習や試合への取り組みに一貫性を作ろうとしている。

「そうしたことを考える文化が今までの僕らにはなかったのですが、いまはチームとして話す機会がすごく増えました。お互いが高い要求をしなきゃダメだというふうにもなっていて、選手は皆『今年は違う』と自信を持って言えています」

 トップリーグ開幕を約1か月後に控えた12月14日には、本拠地の東京・リコー砧グラウンドで前年度2位のサントリーとの練習試合を実施。キック処理を誤った瞬間や、攻め込みながらボールを失った直後などに失点し、10-38で敗れた。しかし、タックル後の素早い起き上がりと防御ラインの出足というクラブの色は示した。松橋も「今日は結局負けちゃいましたけど、あまり悲観はしていない」とし、手ごたえをつかんでいた。

「僕たちがやりたいラグビーができない時にトライを獲られていますが、サントリーのシェイプ(攻撃陣形)に対するディフェンスはできていたし、自分たちもいいアタックができていて、あとは(チャンスでの)精度だけというところ。そこさえ治せば、勝てる試合、となる」

 2023年のワールドカップ・フランス大会はもちろん、20年7月の対イングランド代表2連戦というツアーへも意欲を示すが、あくまでそれは「チームにフォーカスした結果(として参加する)。困難な道ではありますけど、それを成功に変えたい」。リコーで勝利を目指すこと、自身の代表定着への課題を克服することはそう大きく違わないようにも思う。

「この4年間を考える(振り返る)と、すごく悔しかった。自分に負けたというところがある。そうなっている(思うようにいかない)時って、『もっとこうなりたい』と自分のことばかりを考えているというか…。(今後は)いまいるチーム、やっていることにしっかりフォーカスするというマインドになった方がいい。一方でプロのラグビープレーヤーとして自分の価値を高めるべく、もっとパフォーマンスを上げたい。あとは、経験値を上げていきたいです」

 変わろうとする世田谷区のクラブに「コミット」しながら、アスリートとして自分の強みを磨く。「結果」的に日本代表の軸となるための、松橋の挑戦が始まった。

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