【ラグリパWest】 1年でのAリーグ復帰を 関西大学
関西大学のこの秋の目標は決まっている。
Aリーグへの復帰である。
「マストですね。絶対です」
ヘッドコーチの園田晃将(てるまさ)は言った。日々の練習を取り仕切る35歳は就任7年目に入った。
通称「カンダイ」の創部は1923年(大正12)。関西の主要大学では同志社を頭に3番目の歴史を有する。紺白の段柄をまとう名門は昨年12月9日、Bリーグに降格した。
リーグ戦では7戦全敗。最下位8位での入替戦は、外国人留学生が軸になる摂南大に29-31と2点差で敗れた。
「中心選手5人が前十字じん帯を切って、試合に出られませんでした」
監督の桑原久佳は振り返った。
今年度の主将でもあるSO小松原柚貴(東海大五出身 4年)や決定力のあるWTB末廣賢三(京都成章出身 3年)らが復帰に1年近くかかる大ケガに見舞われた。
それだけが理由ではない。アンストラクチャーのラグビーに重点を置き、自陣からでも展開。風上に立ちながらキックを多用せず、優勢だったモールも手段にしなかった。
ターンオーバーなどから、パスを使い一気にトライを獲りにいくアンストラクチャーは、園田やコーチの森拓郎が所属したサニックスのお家芸だ。ただし、いわゆる「乱戦」は、意図的に作り上げるのは難しい。
これまでの成績がそれを物語っている。
2018年: 8位(降格)
2017年: 5位
2016年: 8位
2015年: 4位
2014年: Bから昇格
2013年: 7位(降格)
2012年: Bから昇格
32年ぶりにAリーグで戦った2013年に園田がヘッドコーチに就任した。それ以降、成績は中位から下位を激しく上下する。安定しない。
昨年の降格に関して、根本的原因だと思うことを小松原は語る。
「フィジカルも体力もありませんでした」
乱戦で当たり負けしない肉体、さらには相手の上を行く持久力もなかった。
年明けとともにその部分の強化に励む。
まずはウエイトトレ。すべての動作の源である下半身を鍛えるスクワットはさまざまな形で1時間ほど続けた。
「ケガをする前に比べ、最高値は20キロ上がっています。160キロになりました」
小松原はパワーアップを実感している。
スタミナに関しては、グラウンド全面を使う試合形式を多くした。自陣22メートルから攻め上がる。ミスが出れば、コーチがボールを転がしたところから再開する。5分ほど続ければ、息が上がる。それを連続する。
「フィットネスと同時に経験も積めます」
小松原は攻守をイメージしやすく、試合勘も養える利点も挙げた。
夏合宿は長野・菅平で8月18日から10泊11日でおこなった。最後の2日間は8キロのクロスカントリー。1500メートルほどの高原は空気が薄く、心肺機能の増強に役立った。
アンストラクチャーよりも確実に現れ、点数につながるセットプレーの安定にもつとめた。園田は話す。
「ユニット練習を去年の1.5倍くらいにしました。FWは必然的にスクラムになります」
それでも、行動が結果につながるには時間がかかる。春はAリーグチームに5戦全敗。
12-40 天理、14-38 京都産業、28-54 同志社、24-54 関西学院、5-35 近畿。
夏合宿では関東リーグ戦1部の日本大に14-68で大敗した。強化中のセットプレーで後手を踏んだ。
園田はこれまでを総括する。
「試合の結果は出ていませんが、ピークとしてAリーグは開幕の8月、僕らは入替戦のある12月。4か月ほど差があります。今からかな、と考えています。しかしながら、危機と焦りもないことはありません」
Bリーグは力の差が大きい。優勝争いとそれに伴う入替戦出場の順位を決める相手は龍谷大が濃厚だ。激しい戦いになるのは師走前後。それでも、目に見える成果は欲しい。
今年のBリーグは2増の12チーム編成になった。6チームずつによるリーグ戦で始まる。その勝敗によって3つのカテゴリーに分かれ、再度のリーグ戦で順位を決める。
初戦の相手は神戸大。9月8日(日)、大阪・吹田の関大中央グラウンドで14時開始だ。
「カンダイに来てよかったです。学年関係なく仲良くできました。助けられました」
小松原は表情を和ませる。
「だからこそ、次の学年につなげたい。後輩たちはAで頑張ってほしい。僕らは上げるだけです」
小松原の同期は要所を固める。
スクラムの軸はPR井之上悠(関大北陽)、タックルが強いFL井戸健二(大阪桐蔭)、副将のNO8上村彰太(東海大五)、パスさばきに優れるSH住吉玄丞(東福岡)、166センチと小柄ながらパワフルなCTB津田剛希(天理)…。4年生の力を結集して、元いた場所に必ず戻りたい。