王座復権目指す帝京大の安田司は日々「ゴムチップ」を清掃。2日は王者・明大と。

　全国大学選手権を一昨季まで9連覇した帝京大ラグビー部は現在、２季ぶり10度目の優勝に向け再出発している。

「まとまり、一人ひとりのスキルはまだまだだと思っている。でも、確実によくはなっている。もっともっとできると思って、頑張っていきます」

　4月下旬にこう話したのは、大阪・常翔学園高出身の安田司。1年時から出場機会を得てきた身長180センチ、体重105キロの3年生FLだ。頑健な身体を活かした突進、タックルに定評がある。クラブが歴史的に重視してきたコンタクトシーンで際立つとあって、今後の顔ともなりうる。

　帝京大には、ルーキーが雑務をおこなわない文化がある。部内に複数設置された「係」には2年に進級する際に割り振られ、3、4年生がグラウンド内外でのロールモデルを目指す。

　今年度から上級生グループに入った安田が務めるのは、「ウェイトルーム係」。トレーニングルームの整理整頓などが主な仕事だ。安田は自身の課題設定にマッチするからと、かねて就任を希望していたという。

「（どの係をするかは）先輩が選んでくれるのですが、僕はずっと（ウェイトルーム係に）入りたいと思っていました。ウェイトルーム係って、最後まで（トレーニングルームに）残ってウェイトができるんです。もともと（フィジカリティが）弱かったので、身体作りをしたかった」

　もともとコンタクトが好きだったという安田だが、大学ラグビー界で際立つにはより一層の鍛錬が必要と感じていたのだろう。晴れて着任すれば、「夕食のタイミングは皆より遅くなりがちですが、責任を持ってやっています」。本来の職務である清掃業務でも、ラグビーで求められる「目配り、気配り」を徹底しているという。

　特に気になるのはゴムチップ。部員がトレーニングルームへソックスを脱ぎ入室するたびに、人工芝の練習グラウンドへ散らばる黒い粒が舞ってしまう。「それがずっとそのままだったら汚くなる」と、皆が帰れば部屋の隅々へ視線を向けるようだ。

「他には水周りをきれいにして、ラックのずれを戻します。あとは忘れ物を（所定の場所に）まとめておいたり……」

　5月26日は山梨中銀スタジアムで東海大に26－31と敗れ、参戦する関東大学春季大会Aグループの戦績を3勝1敗とする。続く6月2日には千葉・中台運動公園陸上競技場で、前年度の日本一チームでもある明大と招待試合を実施する。今季の大学ラグビーシーンで最も注目されるゲームのひとつで、安田は接点周辺での丁寧なクリーンアウトを期待される。