コラム 2019.03.01
【コラム】サンウルブズの、茂野の心意気。

【コラム】サンウルブズの、茂野の心意気。

[ 中川文如 ]



 攻撃だけにとどまらない。防御でも密集から密集へと走り回り、水もれをタックルでふさぎ続けた。
「しんどいですよ。しんどいけど、空いたスペースがあればSHがカバーして埋めなくては。もっと、タックルします」
 ピッチを俯瞰して周囲に指示を出すのが、防御時のSHにとって最優先の役割。つまり、システムが機能していれば基本的にコンタクトは少ない。そのSHが積極的なタックルで破綻を食い止めれば、どれだけ味方を助けられることか。この人はわかっている。

 9月開幕のワールドカップに向け、いま、日本代表の本体はコンディション調整に時間を費やしている。サンウルブズでプレーする者たちの立場は、やや微妙にも映る。
 茂野は目の前のことだけに集中している。
「いまはサンウルブズの選手。試合ごとに経験値を高められる。いいプレーをすれば、自然と、いい結果につながると思う」

 この一戦の2日後。代表本体の感想を知りたくて練習を訪ねた。サンウルブズが演じた攻め手はすなわちジャパンがめざすそれなのだと、多くの選手が口をそろえた。
 同じSHの流大は「チームを引っ張っている」と茂野の仕掛けをリスペクト。そして、続けた。
「ただ、誰も結果に満足していないというのがすごく伝わってきた。僕も昨季、サンウルブズを経験して、ああいうぎりぎりの試合を勝てるか勝てないか、が重要なのだと実感したので」

 善戦を善戦に終わらせない心意気。いいじゃないか。自分に厳しく。厳しい時ほど厳しい選択を。
 そうしなければラグビーでは勝てない。
 そうしなければ、日本のラグビーは勝てない。

【筆者プロフィール】
中川文如(なかがわ ふみゆき)
朝日新聞記者。1975年生まれ。スクール☆ウォーズや雪の早明戦に憧れて高校でラグビー部に入ったが、あまりに下手すぎて大学では同好会へ。この7年間でBKすべてのポジションを経験した。朝日新聞入社後は2007年ワールドカップの現地取材などを経て、2018年、ほぼ10年ぶりにラグビー担当に復帰。ツイッター(@nakagawafumi)、ウェブサイト(https://www.asahi.com/sports/rugby/worldcup/)で発信中。好きな選手は元アイルランド代表のCTBブライアン・オドリスコル。間合いで相手を外すプレーがたまらなかった。

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