欲しかったものつかんだ。東京学芸大、全国地区対抗大学大会で優勝。
後半も同様の展開が続いた。
東京学芸大はFWが武骨に体を当て、自信のあるBKが外勝負で前に出る。そうやって敵陣に入っておいて、最後は我慢強くFWでトライを追加した。
4分にLO安達が押し込み、17分はWTB山中宣里がアウトサイドを走る。22分にはPR八山隆優斗がゴール前の壁を破った。
後半早々に逆転。再逆転されるも、もう一度ひっくり返し、引き離す展開に持ち込んだ。
名古屋学院大は一人ひとり自信があるから、アンストラクチャーの状態でボールを手にしたチャンスに力を発揮した。
後半7分、ラインアウトからフェーズを重ねた後、FB鈴木良太がトライ。17-25と離されそうになった27分には、WTB吉川晨がインゴールに入って追い上げた(22-25)。
そして35分のトライは自陣深くからいっきに攻め切ったものだった。相手のミスからボールを手にするとSH牧山巧樹が走り、FB鈴木へ。ゴールキックも決まって逆転(29-25)したときには、そこにいる多くの者たちが勝利を確信した。
しかし、幕切れは冒頭のシーンだった。
東京学芸大は残り5分で逆転された後、ボールを持ち続けた。土壇場でもBKは積極さを失わず、FWは体を張り続ける。相手のミス、反則もあり、ジリジリとトライラインに迫る。最後はPKからFWが固まって前に出て、187センチの巨体がトライラインを越えた。
「最後は(2015年ワールドカップでの日本代表の)南アフリカ戦じゃないけど、絶対に取り切ろう、と。ボールをキープして、近場で体を当て、寄って…。試合の中で、やれると感じていました。準備してきたことをやりました。下級生たちがよくやってくれた」
喜ぶWTB倉林淳主将の顔には、あちこちに傷があった。
ケガ人も出て、この日メンバー表に名前があったのはリザーブも含めて21人だけ。4年生が3人しかいないチームが1年間目指してきたものを手にした。
強豪・桐蔭学園の出身者も数人いるけれど、高校時代にばりばりのレギュラーだった選手はいない。殊勲のトライを決めたLO安達も高校時代はラグビー部の応援団長で、同部唯一の中学までラグビー未経験だった男だ。
勝者は気持ちで勝利をつかんだ。