コラム 2019.01.06
【コラム】秩父宮の7分24秒、早大・齋藤直人の悔恨。

【コラム】秩父宮の7分24秒、早大・齋藤直人の悔恨。

[ 中川文如 ]
潜在能力の高いSH。キックの精度も高い。(撮影/松本かおり)

 つまるところ、「40フェーズ近くも繰り返す攻撃は、決して効果的ではない」という結論にいき着く。テンポを早められないなりにも、もっと緩急をつけられていたならば。ラインの角度も変化に乏しかった。そもそも今季の早大は、運動量を下支えに順目、逆目と簡潔に回してトライを重ねてきたチーム。すれ違いざまの連係、狭いスペースで仕掛ける細やかな合わせ技とは縁遠かった。
「違うゲームマネジメントがあったのではないか。SHとして責任を感じる」
 この場合のマネジメントという言葉には、攻め方の工夫という意味も含まれるだろう。

 秩父宮の7分24秒が始まるきっかけは、齋藤がジャブのように放った2度のハイパントだった。
 試合を立体的に組み立てられる、日本では貴重なSHだ。加えて以前も書いたけれど、その気になれば日本で最もアップビートなテンポでパスをさばけるはず。まだ生かしきれてないけれど、引き出しは多い。

 例えるなら、ワールドカップのたびに日本代表の前に立ちはだかるスコットランド代表のグレイグ・レイドローのように、八面六臂の働きで空間と時間を支配してしまうSHになれる潜在能力を秘めている。
 最高学年を迎える来季、そんな個としての引き出しの多さを、もっとチームに還元していきたい。

 本人もわかっている。
「今季と同じプレーをするだけでは、来季も決勝にはたどり着けない。個人はもちろん、チームとして成長していきたい」
 明大、天理大、そしていまだ雪辱ならぬ帝京大の背中を追うことになった2019年。早大とその9番の捲土重来を楽しみに待とう。

【筆者プロフィール】中川文如( なかがわ ふみゆき )朝日新聞記者。
1975年生まれ。スクール☆ウォーズや雪の早明戦に憧れて高校でラグビー部に入ったが、あまりに下手すぎて大学では同好会へ。この7年間でBKすべてのポジションを経験した。朝日新聞入社後は2007年ワールドカップの現地取材などを経て、2018年、ほぼ10年ぶりにラグビー担当に復帰。ツイッター(@nakagawafumi)、ウェブサイト(https://www.asahi.com/sports/rugby/worldcup/)で発信中。好きな選手は元アイルランド代表のCTBブライアン・オドリスコル。間合いで相手を外すプレーがたまらなかった。

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