セブンズ 2018.12.26

「70点」という名の「100点」目指す羽野一志。オリンピックへの意欲語る。

[ 向 風見也 ]
「70点」という名の「100点」目指す羽野一志。オリンピックへの意欲語る。
NTTコムの羽野一志。写真は10月20日の宗像サニックス戦から(撮影:松本かおり)

 羽野一志は、「僕は、70点くらいのプレーができればいいと思っている」。もっともこの人の言語感覚における「70点」は、一線級の勝負の世界では「100点」に近い。 

 12月8日、東京・秩父宮ラグビー場。国内トップリーグの順位決定トーナメントの2回戦である。身長185センチ、体重88キロで27歳の羽野は、所属するNTTコムの先発左WTBとしてクボタと対戦。後半22分、鋭いキックチェイスと蹴り返された地点への素早い戻りで貴重なトライをマーク。直後のゴール成功でスコアを26-13とし、結局36-13で勝った。 

 自身が良い意味で「70点」と振り返ったプレーは、前半6分頃に披露している。

 敵陣深い位置のタッチライン際でパスを受け取った羽野は、無理に大外を駆け抜けようとせずにグラウンドの内側へコースチェンジ。2名のタックラーの間に切れ込む。その2人を巻き込みながら倒れ、味方がついてきたとわかったところで懐の球を地面に置く。

 端を走らなかったことでタッチラインの外へは出ず、横幅約70メートルのグラウンドのうち1か所に複数の防御を引き寄せ、さらに自軍の攻撃のテンポを保ったのだ。チーム一丸となってボールをゴールエリアへ運ぶラグビーという競技において、ここでの「70点」が「100点」と見られるのは自然だろう。本人は言う。

「100点のプレーをしようとすると0点になるし、基本的に70点のプレーができたらいいなと。今日、久々に勝って嬉しかった。勝つのって、こういう気分なんだなと思いました。スタッフも選手ももどかしいなかでやっていたんですけど、こういう結果が出てくれて嬉しかったです」

 結局、15日まで続いた順位決定トーナメントはクラブ史上最高タイの5位で終えた。もっともそれまでの過程では、自身の言葉通り「もどかしい」思いを抱えていた。

 今年4月、千葉県浦安市の新施設へ移転。クラブハウスには広々としたトレーニング施設とケアルームがあり、設置されたカメラは2面半ある天然芝グラウンドを上空から撮れる。充実のサポート体制が敷かれるなか、ニュージーランド出身のロブ・ペニー ヘッドコーチが就任5年目と戦術・戦略も成熟しつつあった。それでも10月いっぱいまでのレギュラーシーズンは3勝4敗と、レッドカンファレンスで8チーム中4位に終わった。

 12月1日の順位決定トーナメント1回戦では、ホワイトカンファレンス1位のヤマハに21-33で敗れた。羽野が「そろそろベスト4には行きたかったですが…」と話す通り、初の4強入りを逃した悔しさはあった。 

 もっともその後は2連勝。シーズン終盤に勢いを加速できたのも確かだ。その背景には、主役級の復帰があったろう。

 所属選手で日本代表のNO8だったアマナキ・レレイ・マフィは今年7月、プレーしていたレベルズ(オーストラリア)での活動中に暴行容疑で逮捕された。事件の起きたニュージーランドでの司法判断を待つとの方針から、活動自粛を余儀なくされた。

 もっとも本人に反省の色が見られたことなどから、チームは11月下旬に実戦復帰させる。トラブルが発覚した当初を「情報が選手たちに来なかったので、戻ってくるのを願っていただけでした」とする羽野は、雌伏の時を過ごしていた通称「ナキ」を好意的に見る1人だ。

 8月下旬に本拠地へ戻っていたマフィについて、こう証言する。

「ナキはずっとBチーム(控え)で練習していたんですけど、もう凄い突破力で。早くAチーム(レギュラー)に帰ってこないかなとも思いながらやっていました! …ナキは先頭に立ってリーダーシップも取っていた。彼の導きもあってBチームがしっかり身体を当ててくれて、Aチームはすごくいい練習をできていました。いまいる(プレーできる)メンバーがベストだと思って結果を出さなきゃと思ってきましたが、ナキが戻ってきてくれたのは嬉しかった。いろいろなことはありましたけど、彼はラグビーでは世界のトッププレーヤーなので」

 素直で堅実なランナーがこの先見据えるのは、2020年のオリンピック東京大会かもしれない。

 羽野は2016年、同リオデジャネイロ大会で初の正式種目となった男子7人制ラグビー(セブンズ)の日本代表として4位入賞。プール戦では優勝候補のニュージーランド代表を破り、話題を集めた。

 以後はトップリーグが参画する15人制での代表入りを目指しており、現在も2019年のワールドカップ日本大会での日本代表入りを渇望する。もっとも7人制と15人制は、試合時間やスケジュールの違いなどから「似て非なる競技」とも言われている。「ワールドカップにまずはフォーカスしたいんですけど、それがないと判断したらすぐにセブンズへ切り替えようと思っています」と羽野。岩渕健輔・現セブンズ日本代表ヘッドコーチとも対話をしているとし、この先への思いを明かした。

「二兎を追うものは一兎を得ずと言いますし、(いずれは)ひとつに絞ってやりたいと思います。(岩渕ヘッドコーチとは)1回、(セブンズで)代表招集された時に『15人制のチャンスがあるならそちらへ』『チャンスがなければすぐセブンズに行きます』とお話しさせていただいています」

 トップリーグの順位決定トーナメント終了後、ワールドカップに挑む15人制代表の主要候補が揃った。結局、こちらの選から漏れた羽野は、かねてから「オリンピック以降ほとんどセブンズでプレーしてない。フレッシュな気持ちで行きたい」とセブンズへの意欲を語っている。

「リオではメダルを獲るまでが遠かったという印象。東京まで時間は限られている。(目標達成までにすべきことを)フォーカスするところはフォーカスしていきたい」

 どんな舞台でも最高の「70点」のプレーを重ね、「100点」の結果を導きたい。

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