国内 2018.12.02

トップリーグ3連覇に「必要」な伏兵。サントリーのアルコックが好守連発

トップリーグ3連覇に「必要」な伏兵。サントリーのアルコックが好守連発
先発で奮闘したクリス・アルコック。ニックネームはコーキィ(撮影:松本かおり)
 2点リードで迎えた後半ロスタイムの防御シーン。タフガイの真価が問われるところだ。クリス・アルコックは、心に誓う。
「自分たちのストラクチャーを守り、ばかげたことをしない。やることをやれれば、相手を止められる」
 折しも敵陣深い位置での味方のハイタックルにより、相手に自陣10メートルエリア右のラインアウトを与えていた。もっとも国内トップリーグ2連覇中のチャンピオンチームは、黄色い壁を崩さない。今季好調のクボタを迎え、倒れてもすぐに立ち上がる。
 特にひるまなかったのがアルコックだ。サントリーの先発オープンサイドFLとして好守連発の30歳は、疲労のたまるクライマックスの局面でも足を止めない。後半の猛追撃をけん引したインサイドCTBの立川理道を、粘り腰で押し返す。突っ込んでくるランナーを待ち構え、味方と一緒に担ぎ上げる。相手ボールが出たら、すぐに次の防御ラインに加わる。
 最後は向こうがこらえきれずボールをこぼし、28−26のスコアでノーサイド。サントリーが勝った。会場の東京・秩父宮ラグビー場では、公式で「11,770人」の観客が各々の感情をあらわにしていた。
 ちなみに前半のスコアは25−7とサントリーが大差をつけていて、前後半の反則数はサントリーの「3」「10」に対してクボタは「5」「2」(いずれもフリーキックを含む)。勝った沢木敬介監督が「逆に皆さんに質問したいのですが、どうですか」と苦笑するなか、殊勲のアルコックはただ目じりを下げる。安どの顔つきだ。
「(勝つ)チャンスを待ちながら、しっかり守れたと思います」
 南アフリカのダーバンに生まれ、両親の仕事の都合により10歳でオーストラリアのシドニーへ移住する。2010年以降はワラターズ、フォース、ブランビーズとオーストラリア拠点のクラブに入り、国際リーグのスーパーラグビーへチャレンジ。初来日の2017年は釜石でもプレーした。
「違うチームでプレーできる機会があるのは自分にとって嬉しい。さまざまなスタイルを学べますし、その時々で新たなスキルも覚えられます。そうしていい選手になると、自分は信じています」
 身長183センチ、体重107キロと決して大柄ではないが、堅実な守備と仕事量、何より実直さで仲間の信頼を集める。
 サントリーには10月31日付で新加入し、11月は代表組以外のメンバーで臨むカップ戦計3試合に出た。急角度をつけて駆け込むランや高低織り交ぜたタックル、ジャッカル(接点で相手の持つ球に絡むプレー)と持ち味を発揮する。
「(球を奪う)チャンスは常に探している。(相手のサポートが)少しでも遅れたら、行きます。見て、判断するのが大事」
 率直な沢木監督いわく、「アルコック選手、必要です。トータル的にラグビーのセンスがある。うちはサイズに関係なく、サントリーのラグビーができるかどうかという基準でピックアップするので」。新助っ人は、丁寧さと勤勉さを是とするクラブにすっかりなじんでいる。
「敬介さんからは、フィジカルなプレーをしろと言われます。サントリーはプレーしていて楽しい、アタッキングラグビーをします。たくさんのいい選手がひとつになって、お互いがお互いのために助け合ってプレーしています。自分が来たばかりの時も本当に温かく迎えてくれましたし、自分が(不慣れなために)ミスをした時もなぜそうなったかをしっかりと説明してくれます。逆に、誰かがミスをしたら自分もしっかりと伝えてあげなきゃという気持ちにさせられます」
 こう話したのは、今回のクボタ戦を約1週間後に控えていた頃。謙虚さがにじみ出ていた。
 8日、秩父宮でヤマハと準決勝をおこなう。3連覇へ向け、指揮官は「サントリーが接戦する構図、皆さんもおもしろいと思うんです。グレーだから(反則の笛が)吹かれる。そこをクリアにして、自分たちにベクトルを向けて、付け入る隙を与えなければ、しっかりとマネージメントできる」。あちこちに張られた包囲網を破るべく、ぶれない職人をますます重用しそうだ。
(文:向 風見也)

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