国内
2018.12.01
前半戦苦戦も上向き。サントリー、トップリーグ3連覇へのピーキング。
国内最高峰トップリーグで2連覇中のサントリーは12月1日、同リーグの1〜8位決定トーナメントの準々決勝に挑む。当日は東京・秩父宮ラグビー場でクボタと対戦。その前日、一昨季就任の沢木敬介監督らが充実ぶりをうかがわせた。
10月までのレギュラーシーズンではレッドカンファレンスで8チーム中2位となった。攻撃中のミスに手を焼き、第3節ではニュージーランド代表112キャップのSOダン・カーター擁する神戸製鋼に20−36と敗戦。今季の混戦模様を匂わせたが、いま、日本代表30キャップのFB松島幸太朗はこう話す。
「(シーズン序盤は)暑いなかハンドリングエラーも多くなっていましたが、この時期はそれもない」
従来は中断期間中だった11月は、今季新設のカップ戦でプール計3戦を全勝。今度のレギュレーションが決まった時から綿密に強化計画を立ててきた指揮官は、「ブレイクダウン(接点)周りをクリアにすること」「アタックでのボールの運び方」といった課題を日々のトレーニングで向上。その延長でひとつひとつのゲームを制してきた。この時はレギュラーシーズンではあまりおこなわなかった、相手チームの分析にも力を入れた。順位決定戦ですべきオペレーションの実地訓練をした格好だ。
松島は続ける。
「何かを劇的に変えたわけではないですけど、この時期になってくると、皆、調子いいというか。去年のこの時期からチーム的にいい感じになることがある」
松島はこの季節は筋肉系のトラブルのため日本代表の活動を辞退。約1週間前に練習へ合流し、今度の順位決定戦で復活をアピールする。さらに長期欠場中だったオーストラリア代表26キャップ、NO8ショーン・マクマーンもカムバック。個人技に長けた故障者が隊列に戻るのは、チームにとって朗報だろう。
指揮官は、晩秋の充実ぶりを改めて振り返る。
「怪我人も戻ってきて、それまでチャンスのなかった選手もいいラグビーをした。(カップ戦は)いい準備でした。(各週とも)勝つために準備したことが(発揮)できた」
さらに心強いのは、新加入のFLクリス・アルコック。カップ戦で出番を得れば、肉弾戦の球へ絡んだり、防御の隙間へ駆け込んでトライを奪ったりとチームマンとして活躍する。クボタ戦でもスターターに入り、対する日本代表ワールドカップトレーニングスコッドのFLピーター・“ラピース”・ラブスカフニ、南アフリカ代表46キャップのNO8ドウェイン・フェルミューレンとのマッチアップが注目される。
「クボタさんが今季好調(ホワイトカンファレンス3位)な理由はわかっている。フィジカルな部分が意欲的になっている。そこでしっかり、真っ向勝負。小細工はしないです」とは沢木監督。カップ戦での活躍から先発FLに入った飯野晃司も、新助っ人から多くを学びたいという。
「すべてにおいて誠実。サントリーの選手は全員、そうなんですけど、僕が『ここはどう思う』と聞いてきたことにも素直に答えてくれる。僕からもしっかりとコミュニケーションを取って、盗める技術はしっかり盗んでいきたいです」
今秋の日本代表ツアーで初キャップを得た新人のCTB梶村祐介は、今度のクボタ戦では日本代表55キャップの立川理道と対面になる。梶村が憧れていた立川は先の代表活動には不参加も、梶村は立川への畏敬の念を保っている。
「僕のなかではジャパンのCTBはハルさんというイメージがあって、近くで学びたかったというところはありました。ただ、ハルさんが落選して僕が呼ばれたことで、しっかりと自覚と責任を持って臨んでいきたいと思っていました。(次戦では)対戦するチャンスもあると思うので、そこは勝ちにいきたいです」
クボタ戦の前々日に招かれたのは佐藤義人氏。東京都府中市のクラブ施設で、治療台での施術にジムでのトレーニング指導にと精力的に動き回っていた。
佐藤氏は2015年のワールドカップ・イングランド大会で日本代表のトレーナーを務め、短時間で怪我人を回復させるなどしてチームの歴史的3勝をアシスト。以後、現役代表選手の堀江翔太、稲垣啓太らに請われてパナソニックのグラウンドへも訪問している。
当時代表のコーチングコーディネーターだった沢木監督は、佐藤氏招へいの理由を「選手をチューンナップさせるため」と説明。2019年のワールドカップ日本大会に挑む日本代表より先に、名手の仕事に頼った格好だ。
シーズンのクライマックスを間近に控え、「守りに入るわけではないですけど、しっかり勝てるように点を取りに行く」と松島。ペナルティキックを得た際は、リーグ戦中ならトライを狙っていた場面でもペナルティゴールで着実に加点するなど、手堅く戦いたいという。
ディフェンディングチャンピオンはピーキングという得意領域で手ごたえをつかみつつあるなか、3連覇へまい進する。
(文:向 風見也)