国内 2018.10.17

ピーター“ラピース”・ラブスカフニの律儀すぎる談話。

ピーター“ラピース”・ラブスカフニの律儀すぎる談話。
トップ8に入ったクボタのキーマン、ピーター・ラブスカフニ(撮影:早浪章弘)
 国内最高峰トップリーグの今季のオフィシャルファンブックでの紹介文には、「紳士といえばこの人」とある。確かに所属のクボタのスタッフも、口を揃えてこの人の勤勉さを語る。南アフリカから来日して3年目を迎えるピーター“ラピース”・ラブスカフニは、プレーと同時に人柄でチームを引っ張る。
 
 こちらも南アフリカ出身で就任3季目となるフラン・ルディケ ヘッドコーチのもと、「全員が目標、何をすべきかを明確にして、それを達成するために一生懸命、取り組んでいます」とラブスカフニ。チーム状態を問う記者に、透き通ったメッセージを伝える。
 身長189センチ、体重105キロの29歳。南アフリカのチーターズ、ブルズの一員として国際リーグのスーパーラグビーを経験してきた。FLとして相手をつかみ上げる、ひざ下に突き刺さるなどその場に応じたタックルを繰り出し、密集におけるボール奪取でも光る。
 この国でも成果を残し、今季は日本のサンウルブズに入りスーパーラグビーへ挑んだ。契約の都合上4月までの在籍に終わったが、クラブを離れる直前のニュージーランド遠征では2戦続けてゲーム主将を張った。選手として持ち味を発揮したのはもちろん、前向きな声掛けと若手の自主練習のサポートでも光った。実は開幕前から、チームの関係者は「彼を主将にすべきだった」と漏らしていた。
 20歳以下南アフリカ代表への選出、南アフリカ代表のツアーメンバー入りの経験を持つラブスカフニ。もっともテストマッチは未経験とあって、規定上は国内居住3年以上の経過で日本代表入りの資格を得られそう。そのため現在は、日本協会が選ぶ「ワールドカップトレーニングスコッド」に名を連ねている。薫田真広・強化委員長は「二重、三重のチェックが必要」と資格取得可否について慎重を期するも、当の本人は来年のワールドカップ日本大会への出場を望んでいる。
「もちろん、可能であれば日本代表を狙いたいです。ただ、それをするためには非常に激しい競争に挑まなければなりません。スコッドに選ばれた時点で栄誉なこと。というのは、ここに至るまでのたくさんの競争があり、スコッドに入れなかった選手もいるからです。スコッドに選ばれた時点で、スコッドに入らなかった人たちを代表しているという気持ちでいます」
 チームスタッフの通訳を介してこう話す際、自らの置かれた状況を「ラッキー」という単語を使って説明した。もっとも一呼吸置くと、「ここでラッキーという言葉を使うのが正しいのかどうか。私の英語もしっかりしているわけではありませんので、その点も補足します」。このあたりにも、律儀な人柄をにじませる。
 9月24日からの4日間は、和歌山での日本代表候補合宿に参加。「できるだけたくさんのことを学ぶ気持ちでした。何を要求されるにしても、それを全力で取り組むつもりでした」。キャンプのメインディッシュだった走り込みのセッションは怪我で休み、「他のスコッドは一生懸命に走っていました。将来的に到達したい目標のための積み重ねです」と仲間を称えた。
 期間中はワークショップと呼ばれる対話型のミーティングを繰り返したが、内容を聞かれればこう笑顔を作る。
「話し合ったことのうち、ここで言って許されることとそうでないことの区別がまだつかない。ですので、答えるのは控えさせていただきます。ゴメンナサイ」
 日本代表入りと同時に、サンウルブズでの契約延長も期待される。当事者のラブスカフニは「もちろんそう願っていますが、いまはトップリーグのことを考えています」。クボタは第6節終了時点で、ホワイトカンファレンスの8チーム中4位以内を確定させている。11月のカップ戦を経て、12月には優勝を争う1〜8位決定トーナメントに挑める。
「チームに違いをもたらす貢献がしたいです」
 朗らかで誠実な名黒子。注目度は増すばかりだろう。
(文:向 風見也)

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