国内 2018.08.11

東芝ルーキーの全力フィジアン、ジョネ・ナイカブラが五輪を目指す。

東芝ルーキーの全力フィジアン、ジョネ・ナイカブラが五輪を目指す。
セブンズ日本代表でもあるナイカブラ(中央)。今春はワールドシリーズのコアチーム昇格に貢献した
(Photo: Getty Images)
 これから戦う国内最高峰トップリーグの舞台について、「すごくレベルが高いけど、頑張ります」。穏やかなフィジー人ラグビー選手が、ゆっくりと日本語で思いを伝える。
 ジョネ・ナイカブラ。今春から東芝に入った24歳だ。チームの公式サイトによれば、身長177センチ、体重95キロ。上背こそないが、バネがあって献身的だ。
 3月まで4年間在籍した摂南大で日本語クラスに通い、寮で「ステーキ」か「鍋」が出てくるのを楽しみにしていて、グラウンドでは母国でのそれよりボリューム感のある練習に驚いたこともあった。そしていま、新たなステージで存在感を示そうとしている。
 8月4日、東京・キヤノンスポーツパーク。キヤノンとの練習試合にWTBで先発した。うだるような暑さのなか味方のキックを追いかけ、背後に蹴られたボックスキックに鋭く反応し、鋭いステップで防御を破った。後半29分には敵陣22メートルエリア右でパスを受け取ると、やや位置取りの乱れたタックラーたちを置き去り。トライを決めるなどし、36−17とスコアを広げた。最近おこなっていた、スピードトレーニングの成果を発揮できたという。36−31で逃げ切った。
 昨年からチームの採用を務める望月雄太は、初めて採用したルーキーの1人が活躍していることに「いまの一番の俺の楽しみ」と笑う。一昨季まで現役のLO、FLとして勤勉さと知恵を発揮してきた日本代表経験者は、注目のフィジアンを「抜かない」と見る。「抜かない」とは、常に全力を出し切るという意味だろう。
 学生時代のナイカブラの練習態度を見てきた望月は、期待を口にする。
「できないことをやろうとする。言い訳をしない。逆に、大学の頃はすべてを100パーセントでやるがゆえに怪我も多かった。ここでは(体調に合わせて練習量を変えるなどの)コントロールを覚えさせて、プレーは100パーセントでやれるようになったら。シャイでしゃべれないけど、ラグビー面でのコミュニケーションが取れるようになると、もっといいものが出るようになる」
 ナイカブラは世界でも活躍中だ。7月20〜22日は、男子7人制日本代表としてアメリカ・サンフランシスコでのワールドカップセブンズ2018に出場。トップリーグなどの15人制以上にスピードの持続力などが求められるステージでも、その才能を活かしている。
「セブンズをやったおかげでフィットネスは上がった。それがよかった」
 オリンピック競技の「男子7人制ラグビー」の際に桜のジャージィをつけるには、国籍取得が欠かせない。当の本人は「(取得できそうなタイミングは)あと2年(後)くらい」と、一大決心についても真剣に考える。いまから「2年」後は2020年。東京オリンピックがある。
 ナイカブラは他国代表歴を持たないため、トップリーグでは特別枠でプレーできる。特別枠は、2つある外国人枠と別な日本代表予備軍枠。この枠組みの選手は、最大3名まで同時に出場できる。ナイカブラは静かに言う。
「試合に出たいです。試合に出るために(何をすべきか)コーチと話し、トレーニングしていきたいです」
 東芝は8月31日、東京・秩父宮ラグビー場でトップリーグの今季開幕節(対キヤノン)を迎える。
(文:向 風見也)

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