国内
2018.06.05
チームへの想いを胸に。自身初のトップリーグへ挑む日野のCTB坂本椋矢。
昔から仲間と共に這い上がり、全国トップレベルに立ち向かってきた。
日野レッドドルフィンズのCTB坂本椋矢(さかもと・りょうや)はそんなチーム、仲間との縁が深い。
「和歌山工業も、朝日大学もそうでしたが、下から上がりつつ僕も成長できたらな、というチームが多かったと思います」
そして大学卒業後、2015年に入団した日野もまた這い上がるチームだった。
2017年度のトップリーグ入替戦でNTTドコモに20−17で競り勝ち、悲願の初昇格。
この劇的勝利をスタンドで観ていた坂本にとって、自身も初挑戦となるトップリーグは待ちに待ったアピールの舞台だ。
「トップリーグを目指していました。全試合に出る意気込みでやっていきます」
身長174センチ、体重90キロの25歳は大阪府出身。3人兄弟の末っ子で、ラグビーをしていた兄二人を追って幼稚園からラグビーを始めた。
大阪の岬中学校、和歌山工業高でもラグビー部に所属。高校2、3年時には花園出場を果たしたものの、ともに1回戦で全国の壁に阻まれた。
高校卒業後は岐阜県瑞穂市にキャンパスを持つ朝日大学に進学。4年時は主将も務めた朝日大学ラグビー部の魅力を、坂本は溌らつとこう語る。
「有名な人は強豪大学に行ったりするので、僕みたいな無名な選手も多いです。無名だからこそ『やってやろう』『どんな相手でも気持ちで勝っていこう』というチームです」
指揮官である吉川充監督の方針もあり、練習内容、練習時間も4年生が中心となって決めていたという。
「練習メニューも僕らで考えていたんです。行き詰まったらアドバイスを頂くんですが、監督からは『お前らがやりたいように』と。考える能力を身につけなければいけない、という方針でした」
各代ごとに練習メニューが変わるから、年ごとにチームカラーに変化がある。
坂本が主将を務めた2014年度は、前年度の大学選手権で帝京大学に5−102で大敗した経験を生かし、ディフェンス強化を決めた。
「僕たちの代の方針はディフェンス中心でした。3年生の時に帝京大学とやって大敗したので、ディフェンスを強化しようと。普段の練習に、試合形式的な要素を組み込んだりしていました」
そして迎えた4年時の大学選手権は、前年度のセカンドステージ3試合合計で「239」だった失点が「185」に減少。
セカンドステージ第3戦の天理大学戦は結果として20−43で敗戦したが、前半を8点リード(20−12)で折り返すなど健闘した。第1戦・法政大学戦も前半までリードする展開だった。
大学ラストシーズンをセカンドステージ敗退で終えた坂本だが、一方で、シーズンが終了しても次の進路は未定だった。ラグビーを続ける意志はあったが、行き先を見つけられずにいたのだ。
そんな時に声が掛かった。
「滑り込みでした。話を頂いたのも年明けで」
日野が声を掛けてくれなければ「どうなっていたか分からないです」。ありがたかった。
日野が自分のラグビー人生をつないでくれた。
「恩返しの気持ちはやっぱりあります。拾って頂いた、ということがあるので。チームに貢献して恩返しできたらな、という想いは大きいと思います」
恩返しの気持ちで懸命にやってきた。
今では周囲にも認められ、同じバックスの先輩で昨季ジャージーを脱いだ苫谷直樹チーム広報は「去年も坂本は頑張っていました」。いつしか先輩に一目置かれる存在になっていた。
今季の意気込みにも、同じ想いは貫かれている。
「チームに恩返しできるように頑張っていきたいと思います」
いざトップリーグへ。チームに一途なセンターが、仲間と共に輝く時がやってきた。
(文・撮影/多羅正崇)