女子
2018.04.01
「セブンズを日本でもっと」。元NZ代表フリアナさん、女子中学生を指導。
表情豊かに話しかけたフリアナさん。(撮影/松本かおり)
ワン、ツー、スリー、ストロング!
一日の最後には、円陣の最後にそう叫ぶのがルーティンになった。
3月31日、リコーの砧グラウンドで、女子ニュージーランド代表、ブラックファーンズの一員であり、同7人制代表で主将も務めたフリアナ・マニュエルさんのラグビークリニックが開催された。
対象は中学生の女子選手たち。2017-2018年シーズンまでリコーでプレーしたタマティ・エリソン、サクラセブンズの平野優芽も仲間たちとマニュエルさんの指導のサポートをした。
フリアナさんは、サンウルブズでプレーし、2017年度までサントリーに在籍したデレック・カーペンターの奥さんだ。この日はカーペンターもグラウンド脇からトレーニングの模様を見つめた。生まれて4か月の長男を抱っこしたり、あやしたり。夫婦とも日本での生活が気に入っている。
ふたりの間には日本で生まれた、生後4か月のサチウルフくんがいる。サチは日本語の「幸=ハッピー」の意。それに家族の絆が強く、勇敢である狼のイメージを合わせ、素敵な名前を付けた。
この日フリアナさんが教えたのは、セブンズに求められる基本プレーと仲間とのコミュニケーションの取り方、それらを実戦でどう使うかだ。それらにフォーカスし、午前9時から夕方5時までグラウンドを駆け続けた。
一日の始まりは仲間との距離を縮めるところから始まった。2人組になり、それぞれがパートナーを英語で紹介。フリアナさんが持参したリオ五輪の銀メダルもそれぞれが触ってみて、グラウンドに出る前に気持ちを高めた。
いくつも用意されていたセッションは、すべてがつながっていた。
ターゲット、パンチ、フォロースルーをキーワードにしたパス練習。それを終えると、動きながらボールをつなぐ。
リロードの動きが加われば、その前にやったことを忘れがちだ。そんなとき、前のメニューのキーワードをフリアナさんが大きな声で叫ぶ。教わったことが重なって、動きがどんどんスムーズになっていった。
みんなを集めて言った。
「パス練習は、ニュージーランド代表でも毎日欠かさずやっています。皆さんも、毎日10分でいいから続けてください。全体トレーニングの前に、パートナーとこれをやること。セブンズの基本中の基本はパス&サポートよ」
午後はコンタクトプレーやゲーム形式の練習がおこなわれた。
タックルセッションでは基本的な動きから始まって、仲間と合わせて動く練習に発展した。『GO DANCE GO』は、ラインスピードを上げて一斉に前に出て、小刻みなステップでターゲットを見る練習。そこから再加速してスマッシュする。親しみやすいネーミングだから、選手たちの中に入っていきやすかった。
実際のゲーム中には「きょうやったことを使うのよ」の声とともに、各チームを集めてコミュニケーションの大切さを伝えるシーンが何度もあった。
みんなでスペースを見つけたり、作ったりするのが大事。そこに全員でボールを運び、走るのがセブンズの醍醐味だ。
母、ライザ・ミヒヌイさんもブラックファーンズで、史上初めての母娘ニュージーランド代表であるフリアナさんはスポーツ万能。ネットボールをはじめ、フィールドホッケーやタッチラグビー、サーフィン、スキーなどを経験し、本格的にラグビーを始めたのは高校生(マヌレワ・ハイスクール)になってからだ。
15人制の女子ワールドカップにも出場したことがあり、セブンズではリオ五輪の舞台に立つ。同大会で銀メダルを獲得したほか、2013年のワールドカップ・セブンズでは主将として頂点に立っている。ワールドシリーズでも何度も栄光をつかんだ。
輝かしいキャリアの中で蓄積したものを、もっと若い選手たちに伝えたい。世界のあちらこちらでクリニックをやることもあったが、大好きな日本でもっとやれたら。
この春がスタートになればいいな。
丁寧に、楽しく指導した。(撮影/松本かおり)
最後も「ワン、ツー、スリー、ストロング!」で記念撮影。(撮影/松本かおり)