その他 2017.06.21

<不定期連載 壁を打ち破れ!〜サンウルブズの挑戦>  上野裕一ジャパンエスアール会長が考える日本ラグビー未来像? 「いまこそ“日本最高峰=世界最高峰”を目指すべき〜トップ14との交流→クラブW杯の創設を、日本主導で」

<不定期連載 壁を打ち破れ!〜サンウルブズの挑戦> 
上野裕一ジャパンエスアール会長が考える日本ラグビー未来像?
「いまこそ“日本最高峰=世界最高峰”を目指すべき〜トップ14との交流→クラブW杯の創設を、日本主導で」
6月4日におこなわれたトップ14決勝戦には“時の人”マクロン仏大統領も駆けつけた。
 前回からの流れを汲んで、フランスを訪れた際に実感したシーズンストラクチャー再構築の話を続けます。
 すでにワールドラグビーおよびSANZAARは2020年からのウィンドウマンスやスーパーラグビーシーズンの変更を発表しています。現在、6月に設定されているウィンドウマンスは7月になり、その結果、スーパーラグビーは2〜6月にかけて中断期間を設けることなくおこなわれることになります。
 当然ながら、日本としてもこの新たな流れに対応するかたちで、国内シーズンのストラクチャーを変更する必要がある。
 前回述べたように、選手のウェルフェアという問題は十分にケアされなければいけないのは当然ですが、日本代表強化という意味では、スーパーラグビーシーズンを終えた後にウィンドウマンスを迎えられるスケジュールは歓迎すべきものでしょう。
 サンウルブズとしてスーパーラグビーの強豪と1シーズンを戦った後にテストマッチを迎えられる。他のスーパーラグビー組との擦り合わせや選手のコンディション調整がしやすくなるのは確かだと思います。
 その一方で、7月にテストマッチがおこなわれるようになった場合、現在8月開幕となっているトップリーグへの影響も必至でしょう。
 2017-18シーズンのトップリーグは8月18日に開幕して、翌1月14日まで続く予定となっていますが、2020年以降もウィンドウマンスやスーパーラグビーとのシーズンの重複を避けて日程を組む場合、再びシーズンストラクチャーの見直しをしなくてはならなくなります。
 その結果、一部にはスーパーラグビー不要論もくすぶっているようですが、果たして、それは日本ラグビーの将来のためになる選択でしょうか。
 個人的には、日本のラグビーファンの中で日本チームのスーパーラグビーからの撤退を望む人はいないと信じています。
 この連載でも何度も触れてきたとおり、参戦からわずか2シーズンの間にサンウルブズ周辺で起きている現象に関して、SANZAARからの評価は非常に高いものがある。
 地元ファンがここまで熱狂的なサポートをしてくれて、遠吠えを模した声援など独自のラグビーカルチャーを生み出しているチームはサンウルブズ以外にはないと自負してもいます。
 加えて、今回、来日したルーマニア代表、そしてアイルランド代表とのテストマッチでの熱狂ぶりを見ても、日本のファンが真のワールドクラスのラグビーを見たがっているのも間違いない。
 さらに言うなら、2019年の地元開催ワールドカップの後、その傾向が顕著になることも確かでしょう。
 果たして、スーパーラグビーなしで日本のラグビー界はファンを満足させられるコンテンツを維持することができるのか。
 答えは改めて書くまでもないでしょう。
 世界に対してチャレンジしているからこそ、日本のファンはサンウルブズを支持してくれているのです。
フランスのクラブラグビー関係者は日本チームとの交流を望んでいる
 その一方で、スーパーラグビーで戦っているサンウルブズとともに、トップリーグの各チームも将来的に世界王者を目指す存在になれる可能性も十分にあるのではないかと、私自身は考えています。
 それは、今回フランスを訪れて再認識した事実でもあります。
 今回はフランス協会、そしてトップ14と呼ばれるフランスリーグ関係者と言葉を交わす機会が多かったのですが、間違いなくフランスのラグビー関係者は日本との交流を持ちたがっている。
 そういう感触を得られたことこそが、今回のフランス滞在における一番の収穫だったと言っていいでしょう。
 以前、この連載でも、ラグビー版のクラブワールドカップを日本で開催する可能性に触れたことがありますが、最終的にはそこを目指しながら、まずは最も財政面が豊かで、世界中からスター選手たちが集うフランスのトップ14と日本のトップリーグが交流する大会をつくってしまってもいいのではないか。
 私自身が直接フランスのラグビー関係者と言葉を交わしながら得た感触で言うなら、その可能性は十分すぎるほどある。機は熟しているのです。
 繰り返しになりますが、2019年の地元開催のワールドカップを成功させること以上に、2020年以降の日本ラグビーの発展を考えることこそ重要なテーマだと個人的には思っています。
 そのひとつの方策としてトップリーグとトップ14の交流をきっかけとした世界クラブ選手権構想を日本主導で進めていく。
 2019年ワールドカップ開催地決定時にもタッグを組むかたちになったフランスを窓口に、その対象をプレミアシップ、プロ12などへと広げていく可能性も十分あるでしょう。
 「日本最高峰」を謳うトップリーグですが、2020年以降の成熟したラグビーファンの要求に応えるためには、「日本最高峰」にとどまっていてはいけない。
 すでに、単独リーグとしては世界で最も高いレベルのエンターテインメントを提供していると言っていいトップ14のトップクラブがそうであるように、トップリーグのトップチームも世界一を目指す存在になっていってほしいと個人的には思っています。
 そして、それこそがスーパーラグビーを知り、ワールドカップも経験することになる日本のラグビーファンの真の欲求に応える唯一の方法でもあるはすです。
「日本最高峰こそ世界最高峰」
 それこそがトップリーグが将来的に目指すべき方向性であり、そうすればサンウルブズとの共存も「質の高いラグビーを見たい」「世界と戦う日本チームを応援したい」というファンの欲求を満たしながら、当然可能になる。
 次回、2020年以降、日本ラグビー界は具体的にどんなシーズンストラクチャーを導入して、世界と戦いながらファンを満足させていくべきなのか、個人的に考える素案のようなものを示すことにします。
 大いに議論が巻き起こることを期待したいものです。

2

<プロフィール>
上野裕一(うえの ゆういち)
ビジョンは I contribute to the world peace through the development of rugby.
1961年、山梨県出身。県立日川高校、日本体育大学出身。現役時代のポジションはSO。
同大大学院終了。オタゴ大客員研究員。流通経済大教授、同大ラグビー部監督、同CEOなどを歴任後、現在は同大学長補佐。在任中に弘前大学大学院医学研究科にて医学博士取得。
一般社団法人 ジャパンエスアール会長。アジア地域出身者では2人しかいないワールドラグビー「マスタートレーナー」(指導者養成者としての最高資格)も有する。
『ラグビー観戦メソッド 3つの遊びでスッキリわかる』(叢文社)など著書、共著、監修本など多数。

PICK UP