海外 2017.05.26

サンウルブズの庭井祐輔、チーターズ戦も「ベクトル自分」で初代表へ。

サンウルブズの庭井祐輔、チーターズ戦も「ベクトル自分」で初代表へ。
チーターズ戦前日のキャプテンズランで調整する庭井祐輔(撮影:松本かおり)
 国際リーグのスーパーラグビーに日本から参戦して2季目のサンウルブズが、5月27日、東京・秩父宮ラグビー場でチーターズとの第14節に挑む。6月の中断期間前最後の試合にあって、日本代表入りを目指す1人がHOの庭井祐輔だ。
「まだ選ばれてもいないので何とも言えないですが、もし選ばれたら全力でぶつかっていきたいです」
 
 身長174センチ、体重102キロ。20日の第13節(対シャークス/シンガポール・ナショナルスタジアム/●17−38)は休養を与えられたが、4月上旬から約1か月続いたニュージーランド・アルゼンチン遠征では全4試合に出場(2試合先発)を果たした。肉弾戦で持ち前の低さや鋭さを活かした。
「試合には、割と出ている方。その経験を活かしてチームを引っ張っていけたら、とも思います」
 学びもあった。4月22日、インバーカーギル(ニュージーランド)のラグビーパーク・スタジアム。15−40で落とした第9節で、対するハイランダーズのスクラムにやや難儀した。
 組む直前のつかみ合いの際、相手がやや極端に圧力をかけてきたようだ。ルール上は反則とされる所作だが、レフリーによってはあまり問題視しない。各チームがつかみ合った瞬間にどう力を入れるかは、担当レフリーへの傾向分析などを経て決めるのが現状のようだ。
 ハイランダーズ戦時のサンウルブズには、その領域で誤算があったという。時に、大きく押し込まれた。
 長谷川慎スクラムコーチが「ハイランダーズは、サンウルブズとの試合から(それまでと)組み方を変えてきた」と舌を巻くかたわら、最前列中央に入った庭井はこう振り返った。
「あまり(圧力を)かけてこないと分析していたのですが…。試合後に相手の選手と話をしたら、『サンウルブズが(圧力を)かけてくる印象だったので、自分たちもかけることにした』と。そこへの対応が遅くなったのは反省点です。ただ、サンウルブズのスクラムを警戒して組み方を変えてこられたこと自体には、光栄というか、そこまでの成長を感じました」
 この辛苦は、サンウルブズのスクラムをより磨くきっかけとなった。長谷川コーチが作る型の大枠はそのままに、後方から押し込むLOの体勢などにマイナーチェンジがなされた。立ち合いの変化へのリスクヘッジだ。
 ニュージーランド遠征先の選手たちは、29日の第10節でさっそく改善に成功した。ハミルトンのFMGスタジアム・ワイカトでチーフスに20−27と惜敗したが、スクラムでは相手の上体を起こすなど優勢局面を作った。
 いまも自軍ボール確保率9割超をキープする長谷川コーチは、「なぜやられたかがわかって、チーフス戦までに修正した」。庭井はこうだ。
「どんな相手がどんなやり方をしてきても、耐えて、対応できるように、いろんな状況を想定した練習をしてきました。組む前、組んだ後の押し方と、全体的に変わってきたと思います。映像を観たら、フロントロー出身者しかわからないような小さい差なのですが」
 チーターズ戦の2日後、5月29日には、6月にテストマッチをおこなう日本代表のメンバーが発表される。現在故障中の堀江翔太や木津武士、チーターズ戦のリザーブに入る日野剛志らとHOの位置を争う庭井は、選ばれれば初の代表入りとなる。
 国内所属先キヤノンの主将でもある25歳は、スーパーラグビー開幕時こそライバルとの競争に闘志を燃やしてきた。しかしいまは、別な思いが強くなっているという。
「ライバルを意識するより、自分のやるべきことをしっかりやろう、という考えでやっています。個人の成長を考えた時、一番ベクトルを向けるべきは自分だと感じたので。まだまだ、もっといろんなことができるとも思うので、そこを伸ばしていきたいです」
 サンウルブズはここまで計2度の休養週を消化し、戦績を1勝10敗とする。まずは2勝目を目指す背番号2は、他の誰でもない自分の力でテストマッチへも挑む。
(文:向 風見也)

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