国内 2017.04.25

スマートさと激しさと。春季大会Bリーグで慶大が9トライ発進。

スマートさと激しさと。春季大会Bリーグで慶大が9トライ発進。
春の初戦で9トライを奪った慶大。(撮影/多羅正崇)
 関東大学春季大会Bリーグの開幕戦が4月23日、神奈川・慶應義塾大学日吉グラウンドであり、昨季の関東大学対抗戦Aで4位だった慶應義塾大学が、同リーグで6位だった青山学院大学を53−5で下した。失トライは前半36分、ラインアウトモールからの1トライのみ。3季目を迎えた金沢篤ヘッドコーチ(HC)は「3月、4月でやってきたことを出せるかどうかでした。その意味では悪くなかったのかなと思います」と及第点を与えた。
 アタックでは、効果的なキックと広い視野が光った。
 前半9分、ノータッチとなった相手キックからカウンターを開始。左右へボールを運びながら連続攻撃を重ねると、ショートサイドでボールを受けたSO古田京がディフェンス裏へグラバーキック。意志疎通していたチェイサーがブレイクダウンで圧力をかけ、ノットリリースの反則を誘った。
「なるべく意図のないキックは蹴らない、ということを意識しています。チェイサーと蹴る人の意識があってのキックなので。(今日は)ミスだなというキックはなかったと思います」(SO古田)
 直後の慶大ボールスクラム。NO8松村凜太郎がパワフルな突進を見せると、最後はラックからのパスアウトを受けたSO古田が、大外へキックパス。捕球したWTB宮本瑛介がインゴールへ。前段のプレーから、鮮やかにチーム2トライ目を挙げた。
 4年生での話し合いによって選出された新キャプテン、身長189センチのLO佐藤大樹は言う。
「(金沢HCが就任して)1年目はアタック、2年目はディフェンスをやってきました。今年は状況判断のところに力を入れています。今まではアタックの決め事でやっていたところもありましたが、今年は相手の陣形を見て、みんなが考えるということを意識しています」
 全員が相手の陣形を確認し、ボールを動かす。そのための手段として軽々とキックパスを選ぶスマートさ、そして運動量と激しさで主導権を握った。強靭なフィジカルで魅せるFL川合秀和が3トライを挙げるなど、個々の強さも光った。
 対する青学大は0−24のビハインドで迎えた前半36分、敵陣ゴール前ラインアウトからモールで押し込み、LO濱田大聖がグラウンディング。FW一丸のプレーで雄叫びを上げた。
 
 HO猪飼惇を中心とした青学大のスクラムは随所でプレッシャーをかけた。しかし慶大の鋭いディフェンスに苦しみ、トライラインが遠かった。
 
 青学大で2季目を迎えた経験豊富な加藤尋久監督は「先週、先々週からゲームの戦い方を少しずつやり始めたところでした。もうちょっと準備してきたことをやってほしい、という思いもありますが、成果の上がっている人間が増えてきたかなとも思います」と大会初戦を振り返った。
 快勝した慶大の金沢HCは「1年目はアタックのシェイプを落とし込んで、2年目はディフェンスをやりました。3年目は前を見てプレーしようという話をしています。(選手も)周りを判断しながらプレーできるようになっていると思います」。
 慶大は昨季、天理大学に24−29で惜敗して大学選手権ベスト8。昨季からフォワードではHO松岡大介、LO/FL豊田祥平、FL廣川翔也、NO8鈴木達哉らが卒業。しかしバックスにはSO古田、CTB堀越貴晴、また足のケガでリバビリ中のFB丹治辰碩らが残る。この日おこなわれたBチーム同士の試合では、元NO8の2年生、CTB栗原由太が再三にわたり突破を披露した。
 昨年からの戦力の変化は――?
 そう問われた金沢HCは、少し戸惑った様子で「比較的残っていると思います」と答えた。それから付け加えた。
「今年は今年として、戦力アップできるようにやりたいですね」
 どんな陣容であろうと、秋にはタイガージャージにふさわしい集団に仕上げるのが慶大流――。何気ないひと言に、慶大HCとしての矜持が垣間見えた。
 慶大は5月4日、東京・秩父宮ラグビー場で、第100回の節目を迎えた日本最古の大学ラグビー定期戦、同志社大学との定期戦に臨む。そして5月7日には、ふたたび慶大日吉グラウンドで拓殖大学との春季大会第2戦へ。
 大学ラグビーは本格的な春シーズンが到来。日本ラグビー発祥の記念碑が建つグラウンドに、今週末も歓声が響く。
(文/多羅正崇)

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