海外 2017.03.01

学習院大卒のスーパーラグビー プレーヤー。江見翔太の進化は続く。

学習院大卒のスーパーラグビー プレーヤー。江見翔太の進化は続く。
ハリケーンズ戦での江見翔太。思い切りよく走った。
(撮影/松本かおり)
 3月4日にシンガポールで開催されるスーパーラグビーの今季第2戦、キングズとの一戦に向けての準備を進めるサンウルブズ。2月28日には東京・辰巳で午前、午後とトレーニングを重ね、チームは今季初勝利に向けてコンビネーションを確認したり、防御に焦点を当てる練習を繰り返した。
 ハリケーンズに17-83と大敗した開幕戦は、もともとコンディションが整わぬ選手が多い中、さらに数人の怪我人を増やす結果も残った。そのうちの一人がFBのリアン・フィルヨーン。深刻なダメージではないが、この日発表されたシンガポール遠征のメンバーからは外れた。
 そんな背景もあり、オールメンでのコンビネーション時にFBに入ったのは、ハリケーンズ戦でも途中から最後尾に立った江見翔太だった。シンガポール遠征のメンバーには急遽、宗像サニックスのジェイミー・ジェリー・タウランギも加えられたが、チーム戦術の理解度を考えたなら、サントリーの2冠に貢献したストロングランナーが今季第2戦で15番を背負う可能性は高い。
 学習院大学からサンゴリアスに加入して3年。今季初めてサンウルブズに招集された江見は、182?、95?という立派な体格を活かした強気の走りが持ち味だ。ハリケーンズ戦でも、ボールを手に持てば積極的に前に出た。何度か好走を見せた。
「高校、大学とFBをやってはいましたが、サントリーに入ってからはほとんどが11番でのプレーです。でも最初のポジショニングこそ違いますが、(ボールが)動き出せばバックスリーはあまり(背番号は)関係ない。もしFBで試合に出るチャンスがあれば、自分の強みのボールキャリーの部分をしっかりアピールしたいですね」
 そう話す表情には、これまでに経験したことのないレベルでプレーできる喜びが浮かんでいた。
 初めてのスーパーラグビー出場は後半最初からだった。昨季王者との40分で感じたのは、「上には上がいる」の感覚だった。
「ハリケーンズ相手にどこまでやれるか全力でチャレンジし、自信がついたところもありましたが、個々のスキルといいフィジカルの強さといい、もっと勉強しないといけないな、と思った」
 タックルに入ってもオフロードパスでつなく個人技と組織力。人のいないところに蹴るキックの精度や確かな判断力など、FBの位置に立ったことで、より伝わってきた。
「駆け引きというものを教えられました」
 世界最高のアタッキングラグビーを売りとするリーグだけど、激しいだけではない。インターナショナルレベルの経験値の高い選手たちのラグビーナレッジは豊富だ。意識的に片側に寄って立ってみると、必ず空いたスペースにキックが飛んできた。
 ハリケーンズのWTBジュリアン・サヴェアは、以前サンゴリアスのコーチ陣から「もっとラグビーを勉強しろ」と言われ、オフの間に映像等で追っかけた存在だった。少しでもスキを見せればやられる世界。そんな場に立っていられることが、ひとりのプレーヤーとして嬉しい。
「オールブラックスの選手たちと戦えている。それだけでも幸せ」
 だから、この舞台でできるだけ多くの試合に出たい。トップリーグ、日本選手権と戦い、タフな日々が続くけれど、いま感じるのは疲れより充実だ。
 学習院高校でラグビーを始め、最初に桜のエンブレムを胸につけたのは大学1年の時だった(2010年)。スリランカで開催されるセブンズ大会へ参加する日本代表に選ばれたのだが、江見は、大会への準備を進めていた同代表の練習相手だったタマリバクラブの一員としてピッチに立った際(知人が同クラブにいた)、パフォーマンスを評価されて急遽対戦相手側に加わることになった。
 そんな偶然から始まったサクセスストーリー。大学2年時にはU20日本代表に選出され、その後、ワールドカップセブンズに参加するなど経験を積んだ。サントリー入社後も1年目こそ適応に苦しむも、2年目にトライ王、3年目に2冠獲得チームでレギュラー獲得と進化。加速のスピードは増し、憧れのスーパーラグビーへ届いた。
「(スーパーラグビーの)シーズンを通して試合に出られるように結果を残していきたい。幸太朗(松島)など、いま怪我している人たちが(戦列に)戻ってきたときに負けちゃわないようにアピールしないと」
 まずはシンガポールの地で、自分らしくプレーする。

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