国内 2017.01.15

全勝優勝サントリー、名脇役らが振り返る最終戦の深層。

全勝優勝サントリー、名脇役らが振り返る最終戦の深層。
サントリーのLOジョー・ウィーラーとNO8竹本隼太郎(右)。(撮影/早浪章弘)
■ジャパンラグビートップリーグ2016-2017 第15節
2017年1月14日 兵庫・ノエビアスタジアム神戸
サントリー 27-15 神戸製鋼
 サントリーが、前年度9位からのジャンプアップに成功した。
  3連覇中のパナソニックなどいくつかの優勝候補が、開幕直前に合流した主力の体調管理や連携に難儀。一方で4季前のチャンプは、春先から腰を据え強化計画を遂行した。
 各種項目に「インターナショナルスタンダード」という目標値を設定し、克己。そんななか選手たちが胸を張るのは、「ラグビーナレッジ」の高まりだ。戦術理解や正しいプレー選択を支える頭脳を指す。
 
 CTB村田大志は、「ナレッジ」向上のトレーニング法を明かす。
「スーパーラグビーなどの試合を観て、『この〇〇と戦う場合はどうするか?』をグループに分かれて話し合い、それをチームでまとめて…」
 国際リーグを戦う集団の一員になりかわり、難敵を倒すべく知恵を出し合う。様々な意見をまとめ、チームとしての「正解」を紡ぐ…。かような訓練で「ナレッジ」を得た集団は、敵地での接戦も動じずに制す。
「シーズン開始からここを目標にしてきた。安心した、という感じ」
 ムードメーカーのLOのジョー・ウィーラーが笑う。身長200センチ、体重114キロの体躯で動き回り、防御の隙間に杭を打ち続けた。
「神戸さんのコンテストもあり、いい試合になったと思います」
 前半は13分までに0―8とリードされた。対する神戸製鋼は、サントリーの防御網の死角を先回りするよう攻撃組織を形成。個々の突進力と相まって、前に出た。
 かたや後の王者は、後手を踏んだ。攻めては速攻を仕掛けた選手への援護が遅れる。LOウィーラーもこう反省した。
「テンポの速いラグビーはサントリーウェイ。ただ、少し速くやり過ぎてパニックになったかも…」
 守りの亀裂を1つ、ひとつと丁寧にえぐりながら前に進むべし。そんな改善点を挙げて逆転したのは、ハーフタイム直前だった。
 CTBデレック・カーペンターが敵陣深い位置へ侵入後、左から右への大きな展開を経て接点付近で衝突を重ねる。タックラーを寄せ集め、ふたたびカーペンターだ。左大外へロングパスを放つ。WTB江見翔太が余裕を持ってとどめを刺す。14―8。
 
 後半3分のFB松島幸太朗のトライも、周りが丁寧にフェーズを重ねて奪ったもの。21―15のスコアで迎えた後半12分には、WTB江見が「不当なプレー」で一時退場処分を受ける。しかしその直後、やはり春からの鍛錬の成果が危機を救う。
 自陣ゴール前右での相手ボールスクラムをじわっ、とめくり上げる。
 以後、着実に加点してトップに立った。
「最初のヒットは負けていたんですが、瞬時に修正して…。FW8人のまとまりは、あった」
 山岡俊FWコーチの述懐だ。
 NO8竹本隼太郎が「きょうはラグビーがぶれたところもあるので、嬉しいですけど、悔しさもあるのでは」と話すなど、喜びの表現は控えめ。(1月)21日からはトーナメント戦の日本選手権にも参戦する。
 ただ、サントリーがトップリーグを制したのは紛れもない事実だ。
 積み重ねの産物は、渋くとも確かに光っていた。
(文/向 風見也)

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