コラム 2016.09.12

NTTドコモレッドハリケーンズ、雪辱のシーズン初戦は笑顔なき快勝

NTTドコモレッドハリケーンズ、雪辱のシーズン初戦は笑顔なき快勝
NTTドコモはスクラムでJR西日本を圧倒した。
 昨年度、トップリーグから降格したNTTドコモレッドハリケーンズが白星発進する。
 9月10日、トップウェストAの初戦で JR西日本レイラーズに94−12と圧勝。1季での再昇格に弾みをつけた。
 トップリーグ、パナソニックワイルドナイツ対近鉄ライナーズの前座として大阪・万博記念競技場であった試合は、前半3分、スクラムコラプシングによる認定トライで先制。計14トライを奪取した。
 ドコモはケガ人を除くベストメンバー。海外出身4選手が先発する。スーパーラグビー、サンウルブズで戦ったSOリアン・フィルヨーン、CTBパエア ミフィポセチ(日本国籍取得)、南アフリカ代表キャップ22を持ち、ゲームキャプテンをつとめたFLハインリッヒ・ブルソー、流通経済大から加入し2年目のWTBジョセファ・リリダムだ。
 ヘッドコーチは今季就任した南アフリカ出身のダヴィー・セロン。日本での公式戦初勝利に饒舌ながらも辛口だった。
「試合が始まってから60分間はよかったです。でも残り20分がよくない。リザーブ選手にチャンスを与えたのですが、決められたシステム通りに動けませんでした」
 ベンチスタートの8選手は94−5とした後半21分までに5選手が入替出場。ラストまでに全員がピッチに立った。しかし、追加トライは記録できない。
 逆に外国人選手が存在しないJR西日本に後半24分、トライを奪われる。
 戦前から力の差は明らかだった。それだけに、PRとして南アフリカ代表キャップ13を持ち、6シーズンの間、「ベイビー・ボックス」(U20南アフリカ代表)のHCをつとめた49歳は満足できなかった。
 その中でFB才口將太は、14本のゴールキック中、初回からの10連続を含む12本を成功させた。失敗した2本は右隅の難しいショット。右利き足で蹴れば、ポールを巻かず離れていく位置だった。70−5と気の緩む状況をも考え合わせれば、キッカーとしては十分な内容。それでも表情は崩れない。
「プレッシャーのある難しい中で決めないといけません」
 才口には強い悔いが残っている。
 ドコモは今年1月9日、順位決定トーナメント第1節でHonda HEATに20−23で競り負ける。Honda戦も含め3連敗して、最下位16位となった。入替戦では宗像サニックスブルースに15−19。降格が決定した。
 才口はHonda戦の後半11分からキッカーを任された。南アフリカ代表でもあるSOハンドレ・ポラードが交代したためだった。後半16分、1本のPGを外す。
「あの試合で僕が決めていれば、という思いが今でもあります」
 3点を積み上げれば、残り20分で試合は有利に動いたかもしれない。少なくとも同点にはなっている。そうすれば3連敗もなく、降格もなかった。一昨季には副将だった30歳は不甲斐なさを持ち続ける。
「あれから、ゴールキックの練習は常に状況を考えてするようにしています。キックが入れば逆転とかをイメージして。本数も以前は30蹴っていたのを10に落としました。今は量ではなく、質を求めています」
 同志社大出身で8年目のベテランは、しくじりからキックを学んだ。
 チームも才口同様、悔しさを晴らそうとしている。
 2011年、トップリーグ昇格時のCTBであり主将だった尾方宏之を総務の社業から戻し、チーフマネジャーにつかせた。現場ではゼネラルマネジャーの西村剛に次ぐナンバー2。京都産業大時代には副将として、主将の伊藤鍾史(神戸製鋼LO、日本代表)を補佐した。
 37歳の尾方は就任後を振り返る。
「最初はとにかく面談ばっかりでした。みんなの意識を統一することが大切だと考えました。マネジャー同士、マネジャー対コーチや選手。この仕事を始めた4月はほとんど面接とミーティングで時間が過ぎました」
 その中で、「日本一を目指す」ということを再確認する。春から夏にかけて、FWはセットプレーの強化。BKはパスなどハンドリングスキルの向上を図った。
 才口は練習の雰囲気を語る。
「ミスに厳しくなりました。ミスが起こればどうすればそうならないかプレーヤー同士で話し合います。練習自体も100パーセントのフルスピードでやっています。その中で精度を高めようとしています」
 その成果を見るのはリーグ戦だけではない。大差勝ちの連続が予想されるため、シーズン中でもトップリーグチームと練習試合を多く組む。9月24日には東上し、東芝ブレイブルーパス、クボタスピアーズと対戦する。
 ドコモがトップリーグに再昇格するためには6チーム編成のリーグで優勝し、トップイーストディビジョン1(関東)、トップキュウシュウA(九州)の勝者によるトップチャレンジで勝ち抜くことだ。そうすれば自動昇格する。来年度は3地域を再編した下部組織・トップチャレンジリーグ(仮称、8チーム構成)が新設される。新リーグ発足は当事者ではなく、ニュースとして聞きたい。
 「赤」の逆襲のシーズンが始まった。
(文:鎮 勝也)

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ゴールキックをするNTTドコモのFB才口將太

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