国内 2016.06.27

埼玉大ラグビー部・平澤一樹(セブンズ リーグ戦5部選抜)、秩父宮に立つ。

埼玉大ラグビー部・平澤一樹(セブンズ リーグ戦5部選抜)、秩父宮に立つ。
写真中央が埼玉大の平澤一樹。よくディフェンスした。(撮影/松本かおり)

 責任感がそうさせた。
 派手なプレーこそなかったものの粘り強くタックルし続けた。相手の足首に何度もしがみついた男は、赤いストッキングを履いていた。

 6月26日に秩父宮ラグビー場でおこなわれた第4回関東大学オールスター戦。関東大学対抗戦、同リーグ戦所属各大学の部員たちがメインスタンドを埋めたこの日は、リーグ戦選抜×対抗戦選抜がメインゲームとして開催された。しかし、その試合のキックオフ時間、14時10分のずっと前からスタジアムには歓声が響いていた。正午からセブンズのリーグ戦5部選抜×リーグ戦6部選抜、リーグ戦3部選抜×リーグ戦4部選抜、リーグ戦2部選抜×対抗戦B選抜、対抗戦グループ女子×リーグ戦グループ女子がおこなわれたからだ。

 そのリーグ戦5部選抜に赤いストッキングの平澤一樹がいた。2016年シーズン、埼玉大学のBKリーダーを務めている。同部の赤いジャージーではなかったけれど、チームのひとりが聖地・秩父宮のピッチに立つのは歴史的なこと。仲間も応援に駆けつけ、平澤もそれに応えた。
「ピッチに立つと、ぐるっと観客席に囲まれていて圧迫される感じを受けました。秩父宮でプレーできるなんて最高です。緊張もしましたが、他校の仲間とプレーするのも楽しかったし、スタンドからの声も聞こえて楽しめました」
 一生の思い出になる。

 ラグビー好きの父親の影響もあって、仙台一高入学後、部に入った。体験入部と同時にとりこになった。高校3年時は、多賀城高校との合同チームながら宮城県大会3位となり、東北大会にも出場している。
 埼玉大学(経済学部)入学が決まったとき、キャンパスライフでは他のことに情熱を注ごうかとも思ったが、ラグビー部の勧誘を受けると気が変わった。やっぱりおもしろい。高校時代は、少しばかり悔いも残った。また走り始めた。
 現在の部員は16人。試合ができるギリギリの人数しかいないけれど、誰もが真剣に取り組んでいる。昨季はリーグ戦5部で最下位、6部チームとの入替戦でも敗れたが、単独チームで試合に臨める部員数であることから5部残留の特別処置がとられた(2016年度のリーグ戦5部は9チーム)。その配慮に、全力プレーで応えたい。

 ラストシーズンに懸ける平澤。卒業後は某放送局への就職が決まっている。転勤で全国のどこに赴任するか分からないが、社会人になってもプレーを続ける希望も持っている。この日秩父宮でプレーしたことは、全国のどこのクラブに入っても酒席で自慢できるだろう。

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