国内 2015.06.15

グリーンの風、吹く。専修大、関東大学春季大会Cグループ全勝V。

グリーンの風、吹く。専修大、関東大学春季大会Cグループ全勝V。

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しつこい防御と運動量をチームの土台にする専修大学。(撮影/松本かおり)

 多くのOBたちの顔がホーム、伊勢原グラウンドにあった。
 期待の目が集まる中、7点リード(19-12)で迎えた後半31分にはPGを狙う。勝ちにこだわった。試合終了の少し前、SO工藤朗仁がDGを決めたときには沸いた。
 6月14日、専修大学が日本大学を25-12で破り、関東大学春季大会Cグループで今季5勝目。全日程を終えて全勝とし、同グループ優勝を決めた。

 昨季の関東大学リーグ戦1部/2部入替戦で勝利し、13季ぶりの1部復帰を果たした専大。村田亙監督は、「入替戦勝利の3日後からウエートトレーニングに取り組み、(1部校相手に戦えるだけの肉体を作り上げるための)フィジカルアップを図ってきました。その成果が見えてきた」と話した。
 監督就任4年目。最初の2年間は体作りと防御だけに絞り込んで土台を確かにした。3年目の昨季は「専修革命」を選手たちに呼びかける。同監督がかつて仏・バイヨンヌでプレーしていたこともあり、ボールをワイドに動かすフレンチスタイルに取り組んだ。攻撃力を上昇させた。
「今季はさらに変化をつけて、シェイプとポッドを使い分けるラグビーに取り組んでいます」
 相手が関東大学対抗戦Aの下位チーム(vs立大/67-26、vs日体大/30-5)、B上位チーム(vs明学大/71-0)、関東大学リーグ戦1部の下位(vs拓大/31-24)、2部上位チーム(vs日大/25-12)とはいえ、今回の優勝はチームが着実に進歩していることを証明した。

 この日の試合は、細かな部分よりチームの芯としている部分で勝った。
 前半5分、カウンター攻撃から敵陣に攻め入った後、しばらくしてPK機を得る。ラインアウト後のモールを結束よく押し込み、先制トライを奪った。その後は、積極的に前に出る日大の圧力を受ける場面もあり、連続支配からCTB内山泰伸に2トライを奪われたが、慌てることはなかった。乱れなかった。前半は5-12で終えるも、後半に培ってきたフィットネスと防御が光った。

 集中力高く入った後半。専大はテンポのいい攻撃で反則を誘うと、PK→ラインアウト→モールでトライ。コンバージョンも決まり、12-12と追いついた(5分)。そして安定感のあるSH古川浩太郎がチームのリズムを作り続け、流れを自分たちの方へたぐり寄せていった。
 逆転トライもそんな時間帯に訪れた。しつこい防御を繰り返して迎えた後半23分。相手のキックからカウンターアタックを仕掛ける。攻撃力の高いバックスリーがランとパスで前に出る。最後はショートパントで防御裏を攻略し、勝ち越しのトライを奪った(コンバージョンも決まり19-12)。

 PR小俣勇也主将は「今季戦う相手は1部。やるべきことは、まだまだたくさんある」と勝利にも気を引き締めた。
「今日の試合でも4年生は先発に2人、リザーブに2人だけ。2年生が(23人中)10人という若いメンバーで、いい意味で上下関係がないチームなんです。みんな積極的で、勢いを生んでくれています。今シーズンは早い時期から(春季大会のC)グループ優勝を目指して取り組み、その目標を達成できた。結果が残って嬉しいですね」
 同主将は山梨・吉田高校出身。入学前に「専大なら(練習に)ついていけるんじゃないか」とアドバイスをもらい、進学を希望したが、入学してみたら予想していた世界と「まったく違った」と笑う。
「村田さんが監督に就任した年に入学でした。朝練も始まり、私生活の規律もきちんとするようになった。大東(毅)コーチの厳しい指導もあります。そういうものを積み重ねてきました」

 毎週火曜日は全員で午前5時半からトレーニング。他の日もそれぞれが個々のスケジュールに合わせて早朝から動く。そして全員で朝食を採り、授業へ。ハードワークが当たり前になって、長く続いた専大の沈黙の時代が終わった。
 主将は言う。
「1部に昇格して最初の年。絶対に落ちたくない。若い選手が多いので、チームがもっと上を目指せる土台を築くためにも、いい準備をしたいですね」
 今回の優勝は、秋の飛躍を約束するものではないだろう。ただ、昨季から続く上昇の勢いを高め、新たな自信を付け足すことにはなる。
 過酷な夏を笑って迎えられることも大きい。

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