豪州協会が大きなポリシー変更 海外拠点のスターも代表入り可能に
トッププレーヤーたちの相次ぐ海外移籍決定で危機感を抱いているオーストラリア・ラグビー協会(豪州協会)が、代表選手の資格に関する方針を変えた。
これまでは原則的に、海外クラブに所属している選手はナショナルチーム(ワラビーズ)の選考対象外としてきたが、今後は、海外を拠点としている選手でも、豪州協会と少なくとも7年間契約を結んだことがあり、テストキャップを60以上持つ者ならば、代表入りできるようにしたのだ。
国内ラグビー(スーパーラグビー、NRCなど)の活性化や代表チームの競争力などを考えれば、スターたちには海外に出てほしくない。しかし、プロのラグビー選手がグローバルに活躍する時代となり、選手たちの思いも尊重して、方針を変えた。豪州協会のビル・プルバーCEOは、長期的に見てこの変更は豪州ラグビー界と選手に利益をもたらすと信じている。
新方針により、現在フランスでプレーしているFLジョージ・スミス(111キャップ/元サントリー、現在はリヨン所属)、トゥーロンのCTBマット・ギタウ(92キャップ)やWTBドリュー・ミッチェル(63キャップ)などが、ワラビーズに復帰して今年のワールドカップに出場する可能性が出てきた。
また、CTBアダム・アシュリー=クーパー(104キャップ)は来季からフランスのボルドーに加入することを決めたとき、ナショナルチームからの引退を覚悟していたが、今回の豪州協会のポリシー変更により、ワールドカップ後もワラビーズのジャージーを着るかもしれない。
さらに、同じくワールドカップ後にフランス(スタッド・フランセ)へ移籍する元代表主将のSHウィル・ゲニアや、イングランド(ハリクインズ)行きを決めたLOジェームズ・ホーウィル、さらに欧州連覇を狙うトゥーロンへの入団発表が間近と言われているSOクウェイド・クーパーは、年内に60キャップに到達する可能性があり、届けば、オーストラリア代表としての夢も追いながら世界中のどこでもプレーできるようになる。
天才的ユーティリティBKのカートリー・ビールやジェームズ・オコナー、FLデイヴィッド・ポーコック、FLマイケル・フーパー、LOロブ・シモンズなどは来年にもテストマッチ60試合出場を達成し、大きな資格を得ることになるかもしれない。
実は、豪州協会は昨年8月にも大きな決断をし、“柔軟な契約”制度を導入していた。豪州協会と長期契約を結ぶ選手で、海外でのプレーも希望する者に対して、2016年から、契約期間中に海外クラブで1シーズンプレーできる機会を与えるようにしたのだ。ジャパンラグビートップリーグチームやヨーロッパの資金力豊富なクラブが世界クラスの選手獲得に目を光らせており、2015年ワールドカップが大きな節目となることから、フレキシブル契約を活用してトップスターを代表チームに引き留める必要があった。
その方針は少し修正され、日本では複数年プレーすることも可能になったようだ。ジャパンシーズンは短く、北半球と南半球でラグビーシーズンがずれることから、トップリーグや日本選手権を戦ったあと、豪州選手は帰国してスーパーラグビーに参加することもできるからだ。
代表18キャップを持つワラターズのSOバーナード・フォーリーは最近、豪州協会と新たな3年契約を結んだが、そのうちの2シーズンは日本でのプレーを許可する柔軟な契約内容になっており、リコーブラックラムズへの加入が有力視されている。また、チームメイトである世界的スターのFBイズラエル・フォラウ(29キャップ)も同じようにフレキシブル契約で日本行きの可能性を探っていると見られ、『The Courier Mail』など豪州メディアの一部は今年4月、「スーパーラグビーでワラターズの試合がなかった週、フォラウは神戸のクラブ(神戸製鋼)を訪ねていた。クレイグ・ウィングやフレイザー・アンダーソンと一緒にプレーすることになるかもしれない」と報じている。