コラム 2015.04.13

関西セブンズで京産大が初優勝! 新スターも出現

関西セブンズで京産大が初優勝! 新スターも出現

 関西の7人制ラグビーの祭典「関西セブンズフェスティバル」が4月11日、12日、大阪市の鶴見緑地球技場で開催され、12日の決勝トーナメントを勝ち上がった京都産業大学が初優勝を飾った。この大会は7月5日、秩父宮ラグビー場で開催される「ジャパンセブンズ」の予選を兼ねており、昨季のトップリーグ参加チームを除く、関西協会所属の社会人4、クラブ4、大学8の計16チームが参加。京産大がジャパンセブンズの出場権を得た。

 また、12日には女子特別試合として、浪花闘球娘(大阪府女子)、京都JOINUS(京都府女子)、ガールズ兵庫(兵庫県女子)がセブンズで対戦。関西協会所属のトップリーガー20名が参加しての「トップリーグふれあいラグビークリニック」では、幼児から中学生までの子どもたちが日本選手権優勝のヤマハ発動機SH池町信哉、NTTドコモの緑川昌樹らトップリーガーと触れ合った。

 2日間で昨年を上回る約3,000人の観客が集ったが、スタンドを沸かせたのは、関西大学Aリーグ所属チームの奮闘だった。初日最大のアップセットは、3連覇を狙うHonda HEATを京産大が21-12で破った試合。スピードランナー松井匠(東海大仰星、2年)がタッチライン際を快走してトライを奪い、タリフォラウ・タカウ(190?、115?)らパワフルな選手が揃うHondaの突進を粘りのディフェンスで食い止める勝利だった。

 そして、2日目の決勝トーナメントには、Honda以外、関西大学Aのチームがずらりと顔を揃えた。準々決勝では、摂南大がNZ7人制高校代表経験のあるナイカブラ・ジョネらを軸にHondaの防御を崩し、28-0で快勝。その摂南大を、準決勝では天理大が22-7で下し、京産大も、同志社大、関西学院大との死闘を制して決勝に進出するなど、大学生同士の意地の張り合いが観客席を熱くした。

 決勝戦は、トンガ・モセセ(日本航空石川、4年)、フィシプナ・トゥイアキ(日本航空石川、2年)ら留学生を擁する天理大が序盤に17-0とリードを奪ったが、京産大もあきらめずに追いかけ、後半に入ると坂本英人(御所実業、2年)、松井匠が俊足を飛ばしてトライをあげて、19-24と5点差に迫る。天理大の小松節夫監督が警戒していた選手の活躍で流れは一気に京産大へ。最後に決めたのは、プレーメイカーの森田慎也(洛北、3年)だった。右に左にパスダミーを振りながら、やや下がり気味になった天理の防御を一気に破って約40メートルを走り切り、ゴールも決まって26-24と逆転。劇的優勝を成し遂げた。

 会心の笑顔の元木由記雄ヘッドコーチは「ここまでやれるとは思っていませんでした。(選手たちは)よく走りますよ。留学生のいるチームに勝ったのは価値があります」と話し、大西健監督も「これほど、本格的なセブンズができるとは思わなかった」と選手の対応力を称えた。「土・日は彼が教えてくれて」と元木ヘッドが感謝した白藤友数BKコーチは、天理大学OBで2005年春から1年間ニュージーランドのパーマストンノースのクラブ(キアトア)でプレー。帰国後はセコム、サントリーフーズなどに所属し、現在は、京都西総合支援学校で教員をしながら週末、京産大の指導に携わっている。「優勝は想像もしていませんでした。予選突破が目標だったのに」と選手の奮闘に目を細めていた。

 今大会6トライをあげた松井匠は、京都の洛西ラグビースクールでラグビーを始め、京都市立洛南中学、東海大仰星高校と進んだが、高校時代の50メートル走のタイムは6秒2ほどで、目だった選手ではなかった。京産大陸上部のランニングトレーニングで「少しずつ速くなりました」と、現在は、50メートル5秒9。Hondaの選手を抜き去ったトライで自信をつけ、決勝でも2トライをあげたほか、天理大のフィリモニ・コロイブニラギの独走を驚異的な追走で食い止めた。「フィジカル面が課題なので、タックルで相手を一発で倒せるようにして、(15人制でも)レギュラーを獲りたいです」。ここ数年、「今年の京産大の戦力は厳しいのでは」と言われながら、必ずチーム力を上げてくる京産大に、また一人スピードスターが現れたわけだ。秋の関西大学Aリーグも混戦になりそうな予感が漂う各大学の戦いぶりだった。

(文:村上晃一)

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活躍が光った京産大の松井匠(撮影:村上晃一)

【筆者プロフィール】
村上晃一(むらかみ・こういち) ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度西日本学生代表として東西対抗に出場。87年 4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーラン スの編集者、記者として活動。ラグビーマガジン、ナンバー(文藝春秋)などにラグビーについて寄稿。J SPORTSのラグビー解説も98年より継続中。99年、03年、07年、11年のワールドカップでは現地よりコメンテーターを務めた。著書に、「ラグ ビー愛好日記トークライブ集」(ベースボール・マガジン社)3巻、「仲間を信じて」(岩波ジュニア新書)などがある。BS朝日「ラグビーウィークリー」にもコ メンテーターとして出演中。

(トップ写真:関西を制し、ジャパンセブンズ出場権を得た京都産業大/撮影:村上晃一)

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