コラム 2014.12.15

関西大学Aリーグ入替戦 大体大×関大、近大×龍谷大

関西大学Aリーグ入替戦 大体大×関大、近大×龍谷大

 関西大学Aリーグ入替戦は12月13日、大阪市の鶴見緑地球技場で行われ、第1試合ではB1位の関西大学がA8位の大阪体育大学に39−0として、1シーズンでのA復帰を決めた。1972年(昭和47)からAで戦っていた大体大は42年目で初の降格となった。
 第2試合は2008年の降格以来3回目の入替戦出場となるB2位の龍谷大学がA7位の近畿大学に挑んだが、15−61と圧倒された。近大はA残留となった。

 第1試合、ジャージーの色が白と濃紺(関大)、白と黒(大体大)と似ているため、お互いセカンドを使用しての対戦となった。関大は白ベース、大体大は黒を着用した。
 前半20分、試合が動く。
 大体大SH河口太一が自陣22メートル右中間付近でラックサイドを突くが、ボールがこぼれる。関大はこれを素早く獲得。SH松浦大輔、FL柴田昌倫とつなぐ。最後はランニング能力の高いFB吉田圭吾が大体大インゴールに飛び込む。5−0と先制する。
 同31分にコンタクトの強さが光る関大LO辨天耀平がFB古場優介を外に振り切り、右中間にトライを挙げる。
 同36分には関大CTB岡橋大貴が大体大ゴールラインを越えた。
 前半を終了して15−0。関大の一方的な展開になる。

 風下になった後半も関大の勢いは止まらない。後半6分には岡橋がこの日2本目のトライを決めた。同27、39、41分にも5点を重ねた。終わってみればトライ数7−0の快勝だった。主将のNO8豊田伸悟は満面の笑みを浮かべた。
「最高です。怖い相手じゃない、と思っていたけど、前半2本目のトライを取れたあたりで勝てると思いました」

 関大再昇格は昨年就任したコーチ、園田晃将に負うところが大きい。FB、WTBとして宗像サニックスブルースでラグビーを突き詰めた30歳の青年指導者はサニックスで学んだ方法論を1923年(大正12)創部と関西では京都大学、同志社大学に次ぎ3番目に古いチームに落とし込んだ。

 ディフェンスはAの大体大を相手に完封した。園田の就任前、システムは流す形が中心だったが、昨年から前に出させた。2年を費やし努力は結実する。豊田は振り返る。
「僕は飛び出す方が好きです。前に出てタックルすればターンオーバーのチャンスがより広がりますから。そこの徹底を園田さんにお願いしました」
 園田は話す。
「キャプテンの希望通りにするためには、しっかりしたタックル技術が必要です。ですから、もう一度、基本から教えました。手はヒザの裏に入れて絞る、首のひねりを使う、など細かいところからです。キャプテンを中心によくやってくれました」

 ディフェンスはもちろんだが、アタックも見逃せない。
 その特徴は常に頭を上げて前を見て、相手の穴を探す点にある。
 ラックサイドのFWアタックは2パターン。自陣から敵陣22メートル付近までは3人が横に5メートルほどの間隔で広がる。内外のスペースのある方に突進する。前が詰まればパス。その判断は的確で、FW選手ですら視線を前方に向ける。
 ゴール前では3人が三角形を作り、ラックから1、2メートルの短さで局地戦を仕掛ける。
 園田は解説する。
「今年はフォローする選手にボールキャリアーだけを見ず、その左右のスペースを見ろ、と言いました。フォロアーが空いた部分に走り込む。そうすれば抜けます」
 自陣からでもキックを使わないパスアタック、サニックス流が浸透した。9戦全勝としたBでは100点ゲームを3回記録した。コーチングの成果が出た。

 降格が決まった大体大。主将のNO8福本翔平は視線を伏せた。
「イーブンボールの反応が関大より遅かったです。基本的な部分ができていなかった」
 1985年度に主将をつとめた現部長の中井俊行は言葉を絞り出した。
「みんなで歴史を作ってきたけど、一発で吹き飛ばしてしまった。坂田先生(前監督、現関西協会会長)やOBをはじめ関係者に申し訳ない」
 大学選手権での最高位、3回の4強(1987年度、1989年度と2006年度)を知るその眼には涙が浮かんでいた。

 龍谷大はFLとして日本代表キャップ5を持つ大内寛文が監督に就任して3年目で初の入替戦だった。前半18、後半26分の獲得2トライは時間をかけて練習してきたラインアウトモールで挙げた。それでも全体的には近大に及ばなかった。僧籍にいる大内は表情を変えず淡々と話した。
「点差ほどの差はなかったと思います。でも独特の雰囲気で力が出せなかった」
 試合後の円陣では自らに語りかけるように言葉を放った。
「負けてすべてを否定する必要はない。これをつなげて行こう」

 一方、今年から近大のヘッドコーチに就任した松井祥寛は安どの表情を浮かべた。
「ひとまずホッとしました。リーグ戦で勝つのは難しいことを実感しました。それでもアタックは通用したので、来季はディフェンスを磨きたい」
 神戸製鋼でコンタクトに秀でたFLは近大でのコーチ初年を総括した。

 来季の関西大学Aリーグは、関西学院大学、京都産業大学、同志社大学、天理大学、摂南大学、近大、そして関大の8校になる。

(文:鎮 勝也)

【筆者プロフィール】
鎮 勝也(しずめ・かつや) スポーツライター。1966年生まれ。大阪府吹田市出身。6歳から大阪ラグビースクールでラグビーを始める。大阪府立摂津高校、立命館大学を卒業。在阪スポーツ新聞2社で内勤、外勤記者をつとめ、フリーになる。プロ、アマ野球とラグビーを中心に取材。著書に「花園が燃えた日」(論創社)、「伝説の剛速球投手 君は山口高志を見たか」(講談社)がある。

(写真:Aリーグ復帰を決めた関西大/撮影:早浪章弘)

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