コラム 2014.10.20

神戸製鋼の山中がFB初挑戦! 足踏みを続けていた大器、才能爆発へ

神戸製鋼の山中がFB初挑戦! 足踏みを続けていた大器、才能爆発へ

 10月19日は、各地でトップリーグのファーストステージ最終節が行われた。関西のチームでは、神戸製鋼、近鉄、トヨタ自動車、ヤマハ発動機(静岡県は関西協会)が勝利し、セカンドステージのグループA(上位8チーム)の最後の枠に、トヨタ自動車が滑り込んだ。

 神戸製鋼は16チーム中、唯一の無敗チームとしてプールBを1位通過した。しかし、第6節のトヨタ自動車との引き分けに続いて、最終節もキヤノンに大苦戦。17-14という3点差で辛くも白星をあげた。メンバー編成で注目されたのは、FBで初先発した山中亮平である。

 大阪市立真住中学でラグビーを始めてから、東海大仰星高校、早稲田大学を通じても、公式戦で15番を背負うのは初めて。今季も練習試合などでのプレーはあるが、怪我で欠場中の井口剛志にFBのポジショニングなどアドバイスを受けての出場だった。キックの応酬が多い試合だったが、無難にキャッチして蹴り返すなど、地域獲得に貢献。ラインブレイク能力の高さも見せ、前半終了間際には決勝点となるトライをあげてみせた。

 「キック処理はまずまずでした。外のスペースを攻められたときのディフェンスの上がり方が難しかったです。今季はセンター(12番)が多いので、そのほうがやりやすいですけど、FBはアタックのスペースがあってやりがいがあるし、視野も広がります。いろんなポジションをやっていますが、どれも中途半端になることなく、それぞれのポジションを極めていきたいと思います」

 山中のFB起用については、日本代表のエディー・ジョーンズ ヘッドコーチも関心を示している。神戸製鋼のギャリー・ゴールド ヘッドコーチは、山中のプレーについて次のようにコメントした。「山中は将来性豊かなBKプレーヤーです。FBをプレーすることで視野が広がるでしょう。きょうは、ハイパントが多く試される試合でした。いいプレーをしていたと思います。タックルミスがあったのは残念ですが、あれは誰もが難しいシチュエーションでしたからね」。

 ヘッドコーチが指摘したのは、後半19分、キヤノンのWTB原田季郎との一対一で抜かれたシーンだ。本人が外の上がり方が難しかったという通り、FBのディフェンスは相手との間合いが遠いので、一対一は慣れないと難しい面がある。今後の課題だろう。

 9月の日本代表合宿に招集されながら、11月の日本代表メンバーに選ばれなかったことを、どう感じているのか問いかけてみた。「残念です。合宿でもやれる手ごたえはあったので」と即答すると、山中はこう続けた。「でも、CTBは層が厚いし、長く日本代表でやってきた選手もいます。今回は、しょうがない。エディーさんには、フィジカル面で課題も出されています。いつ呼ばれてもいいように、トレーニングしていきます。来年のワールドカップ出場を目指したいです」。

 昨季のトップリーグ出場は、たったの2試合。今季は、ファーストステージの全7試合に出場した。足踏みを続けていた大器が、ようやく2つ目の日本代表キャップ獲得を狙える位置に戻ってきたということだ。

(文:村上晃一)
<ジャパンラグビー トップリーグ 2014-2015 ファーストステージ第7節>
【関西エリア試合結果】

■大阪・近鉄花園ラグビー場
・近鉄ライナーズ○ 31-14 ●コカ・コーラレッドスパークス(前半 14-7)
・ヤマハ発動機ジュビロ○ 19-14 ●東芝ブレイブルーパス(前半 19-9)

■愛媛・ニンジニアスタジアム
・神戸製鋼コベルコスティーラーズ○ 17-14 ●キヤノンイーグルス(前半 17-7)

■奈良・天理親里ラグビー場
・クボタスピアーズ○ 42-28 ●宗像サニックスブルース(前半 15-14)

【筆者プロフィール】
村上晃一(むらかみ・こういち) ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度西日本学生代表として東西対抗に出場。87年 4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーラン スの編集者、記者として活動。ラグビーマガジン、ナンバー(文藝春秋)などにラグビーについて寄稿。J SPORTSのラグビー解説も98年より継続中。99年、03年、07年、11年のワールドカップでは現地よりコメンテーターを務めた。著書に、「ラグ ビー愛好日記トークライブ集」(ベースボール・マガジン社)3巻、「仲間を信じて」(岩波ジュニア新書)などがある。BS朝日ラグビーウィークリーにもコ メンテーターとして出演中。

(写真:神戸製鋼の万能BK、山中亮平/撮影:YOKO EMI)

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