国内 2012.10.11

【向風見也コラム】 光った人たち 2012年秋

【向風見也コラム】 光った人たち 2012年秋


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ラインアウトで強さを発揮する神戸製鋼のLO伊藤鐘史
(撮影:BBM)


 


 


 観戦時の秋風が気持ちのよい時期になった。日本最高峰のトップリーグや各地の大学ラグビーも本格化する。



 以下、序盤戦について記録されたノートの上で躍る選手の一部が、順不同で並んでいる(敬称略)。



 フーリー・デュプレア(サントリー、SH)。日本最高峰のトップリーグでのサントリー戦を記事にする際、30歳のスポーツライターは困る。勝負のポイントを記そうとすれば判で押したようにこの人のキックやランに触れることになるからだ。南アフリカ代表の主力格であったこの人、チームの前がかりな攻撃で絶妙な間を作る舵取り役だ。



 有賀剛(サントリー、FB)。昨季までは負傷続きでトレーニング量が制限されたが、今季は充実した鍛錬のためフィジカル面で強さを見せる。再三、人垣に突っ込みそのままトライした。



 西内勇人(法大、FL)。ピンチでは相手ボールの密集戦で球を奪いまくる。自陣ゴール前でのモールを割るのも「得意」だ。同大が所属するリーグ戦にあって指折りのボールハンターか。



 武者大輔(法大、FL)。指導陣の顔ぶれが揃う前の春先は、練習での陣頭指揮を執った主将。「ディフェンスなら自分でも教えられるので」。シーズン突入後は前年度に引き続き破壊的なタックルを連発する。10月8日、龍ヶ崎はたつのこフィールドでの流経大戦では、後半ロスタイムに逆転され開幕3連勝を逃した。整理体操時、渦中の判定の数々に仲間たちが首を傾げるなか「大学選手権でリベンジしよう!」と言い続ける。「それ(文句)を僕が言ったら終わりなので」



 伊藤鐘史(神戸製鋼、LO)。前半16分、自陣での相手ボールラインアウト。セオリー通りなら競り合わないところでジャンプ一番、スティールした。向こう側のメインジャンパーであるLOケーン・トンプソンに狙いを絞っての好プレーを振り返り、「類まれなるセンス」と笑った。9月15日、東京は秩父宮ラグビー場であったキヤノンとのトップリーグ第3節でのことだった。この午後は後半4分、自陣での鋭いタックルで落球を誘うやすぐに起き上がり、味方からパスを受け大きな突破を見せた。芝の上でのタフネスぶりでギャランティーを稼ぐ職業選手だ。



 斉藤展士(NTTコム、PR)。見た目上はスクラムでほぼ負けなし。もっとも自身は「消化不良」と言い続ける。例えば、相手を押し切ってから前へ倒れることも本人としては不満のようだ。大声。



 山下大悟(NTTコム、CTB)。10月6日、秩父宮でのNTTドコモ戦。こう着状態時はタックルしてはすぐ起き上がりタックルと、威圧感ある黒子であり続けた。攻めてもコンタクト後にセンチ単位で前に出るランと守備網の背後を突くロングパス、効果的な囮(おとり)の走りでクラブのストラクチャーに命を吹き込む。



 ミルズ・ムリアイナ(NTTドコモ、FB)。件のNTTダービーでは、鋭い出足のチャージで相手キックの距離を縮めるなどしてスコアを引き締めた。



 カーン・ヘスケス(サニックス、WTB)。球持てば観客を沸かせる有数の存在。



 ブラッド・ソーン(サニックス、LO)。昨秋母国であったワールドカップではニュージーランド代表。サニックス入団2年目はチームによりフィットしたと、藤井雄一郎監督も認める。例えばスクラム。あまり押されないようになり、もし押される際も破壊はされない。支柱のソーンが踏ん張っているからか。藤井監督は言う。「去年はウチの組み方にソーンが合わせていたけど、今年はソーンの組み方にウチが合わせている。他のLOもその組み方で練習しているから、メンバーが変わっても(大丈夫)」



 マイケル・リーチ(東芝、FL)。開幕週の火曜に負傷も、シーズンに入れば第2節から出場。昨年度から意識するターンオーバーを決めるシーンを増やしていた。



 トマシ・ソンゲタ(キヤノン、NO8)。9月1日の大阪は長居第2陸上競技場、NTTドコモを38−14と下したトップリーグ初戦では、ボール争奪局面に身体ごとスマッシュし続け味方を勢いづけた。「フィジカルゲームが好き」。今季昇格したてながら肉弾戦で健闘する新興クラブにあって、LO日高駿、FL竹山浩史らとパンチ力を誇示する。



 櫻井朋広(NEC、SH)。身長165センチ。接点から素早く球を捌くスキルを有しつつ、味方のニーズや相手守備の並びに応じてテンポに強弱をつける。高校時代から今に至るまで、朝5時半からの早朝練習を欠かさぬ青年だ。9月8日、秩父宮でのトップリーグ第3節。前半18分に中盤でのハイボールを捕るべく跳躍する。トヨタの身長186センチのWTB遠藤幸佑に競り勝った。



 三宅敬(パナソニック、WTB)。今季は体脂肪率を12%から10%以下に落としたため、体重に変わりがなくても上半身が頑健になった印象を与える。「むちゃくちゃ調子いいです。なかなかトライという結果には結びつかないですけど」。9月22日、秩父宮。東芝に22−32と敗れた第4節でのこと。失点の直後に得たキックオフの弾道をトップスピードで追いかけ続けた。「どこにチャンスが転がっているかわからないですから」。後半6分、そこを起点に逆サイドの山田(詳細下記)がトライを決めた。



 山田章仁(パナソニック、WTB)。身体能力の開発に余念なき華である。昨季序盤は「思ったよりスピードがつきすぎちゃって」捕球のタイミングが合わず、ミスを連発。身体と脳の感覚が一致した頃には相手選手のハイタックルで負傷。本人は嫌いな言葉だろうが、不運が続いた。体重を5キロ増で臨んだ今季は開幕から5戦で8トライ。その裏には、現在のラグビーファンなら誰もが知っている人からの助言があったようだが…。新加入の大物、ソニー=ビル・ウィリアムズとはどこか心の深い部分で繋がっていそう。



(文・向 風見也)



 


【筆者プロフィール】
向 風見也(むかい・ふみや)
ラグビーライター。1982年、富山県生まれ。楕円球と出会ったのは11歳の頃。都立狛江高校ラグビー部では主将を務めた。成城大学卒。編集プロダクション勤務を経て、2006年より独立。専門はラグビー・スポーツ・人間・平和。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)がある。技術指南書やスポーツゲーム攻略本の構成も手掛け、『ぐんぐんうまくなる! 7人制ラグビー』(岩渕健輔著、ベースボール・マガジン社)、『DVDでよくわかる ラグビー上達テクニック』(林雅人監修、実業之日本社)の構成も担当。『ラグビーマガジン』『Sportiva』などにも寄稿している。


 

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