国内 2012.09.17

新時代の一歩 八幡の鉄人が15年ぶりに九州1部リーグで奮闘

新時代の一歩 八幡の鉄人が15年ぶりに九州1部リーグで奮闘

 八幡の鉄の男たちが帰ってきた。1950年代から60年代にかけて黄金期を築き、全国社会人大会で4連覇を含む12度の優勝。日本協会招待NHK杯、日本選手権大会でも栄冠を掲げた八幡製鐵は、新日鐵八幡と名前を変え、長き低迷期を経て15年ぶりに九州1部リーグへ復帰した。昨季はトップキュウシュウBで2位となり、三菱重工長崎との入替戦に勝利。創部85周年の今年は、トップキュウシュウAでプレーする。
「伝統ある八幡を、なんとかトップキュウシュウAに上げようと頑張ってきた。
苦しい時代を過ごしてきたメンバーの思いも込めて戦う。OBの方々にも、ようやくAリーグでの試合を報告できる」(富永親盛 監督)



 9月16日、他チームから一週間遅れての今季第1戦。相手は、トップリーグ昇格を目指す優勝候補のマツダだ。台風接近の北九州本城陸上競技場は、試合前から雨風が舞っていた。
 序盤の10分を、新日鐵八幡は敵陣で支配する。速攻にマツダは後退り、反則を
繰り返した。しかし八幡は、22メートル内に入っても、最後の壁が突破できない。強風がラインアウトの邪魔をした。何本目かのペナルティをもらったとき、ベンチはたまらず「ゴール狙え、ゴール!」と叫んだが、背番号7をつけた吉見昌浩キャプテンはあえてポストを狙わなかった。
「マツダは山形屋との開幕戦を114−0と圧倒している。序盤からアグレッシブ
に行かなければ大差をつけられる可能性があり、ファイトを続ける選択をした」
 結局、新日鐵八幡は得点できなかった。それでも、闘志を前面に出したプレー
により、前半を0−14と競って折り返す。
 富永監督は今季のチームについて、スクラムとディフェンスのセットが安定し
てきたと成長を感じている。ブレイクダウンでファイトできたことも、前半の接戦につながった。


 しかし、CTBロマノ・レメキ、NO8ロマニ・トンゴトンゴを筆頭に、突破力で勝るマツダは後半にエンジンをかけた。60分、ゴールラインを背にした相手がラインアウトで乱れ、こぼれ球を拾って追加点。その2分後には、FB三好啓太がハーフウェイ左からしなやかに駆け抜け、マツダに4本目のトライが生まれた。73分には敵陣10メートルでのスクラムから右を破り、途中出場のNO8マナコ・トンガがインゴールへ。フルタイム直前にはマツダのバックス陣がスピードを見せつけ、0−36で、新日鐵八幡の九州1部リーグ復帰第1戦は終わった。



 試合後、八幡で指揮を執って10年目の富永監督はサバサバしていた。
「マツダの強さ、Aの厳しさを感じた。(得点力高いマツダ相手に0−36というスコアは)八幡のディフェンスに対する強い気持ちが出た部分もあっただろうが、悪天候により、相手にはハンドリングミスもあった。コチラが救われたともいえる。それでも、選手たちの闘志は評価したい。そして、会社や職場の仲間、OB、サポートしていただいているすべての方々のおかげで、今シーズンの一歩を踏み出せたことをありがたく思っています。今後、コカ・コーラウエスト、JR九州など手強い相手との戦いが控えているが、全力で挑む。力が接近しているその他のチームとの試合は、最後まで食らいついて、ぜひ勝利をものにしたいですね」



 吉見キャプテンも前向きだ。
「最後の20分で差が出た。終盤をいかに集中して戦うかが強いチームとの違いだと思う。そして、相手の当たりの強さも身に染みた。ファーストディフェンスはできていたと思うが、フェーズが重なるごとに前に出られて、後手後手になった。しっかり修正したい。八幡はサイズが小さいチームなので、ひたむきに下へ突き刺さって、体を張り続けるしかない。気持ちのこもったラグビーをしていくことが大事。そうすれば、Aリーグでいい勝負ができると思う」


 頼もしきリーダーは最後に、「八幡の選手として、プライドがあります」とも言った。他の部員もきっと同じ気持ちだろう。古豪復活へ。八幡の若き鉄人たちが、新時代の一歩を力強く踏み出した。


 


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試合後、応援者たちに挨拶をする新日鐵八幡の選手たち。右端が吉見キャプテン
(撮影:Kiyoshi Takenaka)


 

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