コカ・コーラに刺激十分 トップキュウシュウで生まれ変わる
九州では飛び抜けた存在でなければならない。1年後には、日本最高峰舞台「トップリーグ」に復帰して、頂点を目指す勝負をするのだから。コカ・コーラウエストレッドスパークスは、2012−13シーズンをトップキュウシュウAリーグで迎えた。降格からの再出発。9月8日、福岡市・香椎浜ふ頭ホームグラウンドでの開幕戦、中国電力を111−0と圧倒した。
スコッドには7人のテストキャップホルダーがいる。キャプテンのNO8豊田将万、今春に日本代表デビューを果たしたHO有田隆平とLO/FL桑水流裕策、2007年ワールドカップで奮闘したPR西浦達吉に、2011年の大舞台で世界と闘ったFBウェブ将武。それに、サモア代表のLOジョニー・ファアマトゥアイヌとCTBエリオタ・フイマオノ=サポルだ。7人制代表で手足を磨いた男たちもいる。昨季、早稲田大学のキャプテンだったFL山下昂大もいずれ、チームの核となるだろう。故障者がおり、豪華メンバーが勢揃いすることはなかったが、『RE BORN』(生まれ変わる)をスローガンとする新チームはハツラツとしていた。
試合は前半4分、スーパーラグビー経験を持つ新加入のFBトゥ・ウマガマーシャルが、パワフルに走り抜けた。トライショーの幕開け。6分、10分、20分、21分…、リスタートからのノーホイッスルトライも何度かあり、前半9本、後半8本、計17トライが生まれた。
フォワードがよく走る。バックスも簡単には倒れない。中国電力も必死に食らいつこうとするが、レッドスパークスのテンポに追いつけなかった。結果的には、ミスマッチか。
「相手に合わせんよ、相手に合わせん」
「雑にならんように、締めていこう」
「ここから! 運動量! しっかり前見て!」
キュウシュウで全勝、そしてトップチャレンジ、日本選手権を先に見据える男たちの、声もよく出た80分間。
プレーヤーとして退き、今季からヘッドコーチに就任した山口智史は、満足度の半分にも届かないと言いながらも、手ごたえを感じていた。
「フィジカルで勝つ、フィットネスで勝つという原点に戻ろうと、春シーズンだけで200キロ以上は走ってきた。その成果は出ていると思う。反省点はディフェンスでのブレイクダウン。そこでしっかりプレッシャーをかけて、ボールを獲りに行けていなかった。アタック面では、まだ凡ミスが多い。点差がつくような試合でも、自分たちが意図した形でしっかりトライに結びつけていくことが、今後の課題だと思う」
同じ地区のライバルである福岡サニックス、九州電力はトップリーグに参戦しているため、競り合う相手が少なくなった。チーム力を上げていくことは、正直、難しいかな、という思いもある。
「ただ、選手層を考えると、トップキュウシュウでは若手を試すことができるし、チームにとっては成長の場でもある。プラス面もあり、ポジティブにとらえようと思っています」
開幕戦では、4人の新加入選手(PR茅島雅俊、FL山下、CTBサポル、FBウマガマーシャル)が先発出場した。 外国人2人は中心選手であり、フレッシュな風を起こしているルーキー2人に対しても、指揮官の期待は高い。
「しっかり経験を積んで、12月、1月、シーズンの終盤で大きな力を発揮してほしい」
いい刺激があってこそのコカ・コーラだ。
新キャプテンの豊田将万は、足の甲を怪我しているため、今季最初の試合をフィールドの外から見ていた。
「1、2週間で戦列復帰できると思います。試合の相手は去年と全然違うけど、目標は明確なので、どんな相手でも、どんな状況でも、高い意識を持ってやるしかない。バックローの競争も激しい。コウタ(先発出場したルーキー山下)はプレーだけでなく、みんなをリードする力もある。選手として負けないように、同じフィールドで激しくポジションを争って、一緒に出れるように互いに高めあっていきたい。一戦一戦しっかり勝って、トップチャレンジへ。そこからが本当の勝負だと思っているので、チーム力を落とさないように、やるべきことを集中してやります」
エディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチが期待するひとり、HO有田隆平にとっても大事なシーズンだ。4月28日のカザフスタン戦でデビュー以来、7キャップを重ねたものの、フレンチ・バーバリアンズ戦で甘さを露呈してしまった。
「ジャパンに行かせてもらって、セットプレーの不安定さを指摘されました。世界と戦うにはまだまだだと痛感した。フィールドプレーでも課題を持っているが、ラインアウトで精度を高めることが自分には求められている。そこをレベルアップできれば、チーム力向上につながる。11月の日本代表欧州遠征は、もちろん、頭にある。エディー・ジョーンズHCがトップキュウシュウをチェックしてくれるかどうかはわからないけど、呼ばれるように、アピールしたいです。今度がダメなら来年、という甘い世界ではない。何度もチャンスがあるわけではないので、しっかりつかめるように。そのためにも、トップキュウシュウでのすべての試合が大事になってくると思います」
志高いコカ・コーラウエストレッドスパークスを止めるチームは九州にいるのか。マツダブルーズーマーズも、今季初戦は114−0で好発進した。昨季トップチャレンジを経験したJR九州サンダースも、打倒コカ・コーラに燃えている。3強に力の差を見せつけられた中国電力、山形屋、福岡銀行だって、簡単に引き下がるほどヤワな相手ではなく、15年ぶりに九州1部リーグへ復帰した古豪・新日鐵ハ幡が今週末に登場だ。
熱戦はトップリーグばかりではない。下部リーグのドラマも、見逃せない。